私が伝える歴史 ものづくり 食べもの
今回私たちは「私が伝える歴史 ものづくり 食べもの」ということでテーマを設定した。
この「私」というのは、誰か他の人ではなくて、私たち個人一人ひとり、区民一人ひとりのこと。
港北区の皆さんを横につなぐものとして、「歴史・ものづくり・食べもの」の3つが、私たちを横につなぎ、連携することにつながるのではないかと考えている。
サブタイトルとして、「楽しい!美味しい!魅力発見」という言葉を設定した。「楽しい」というのは、自分自身がまず楽しくなければ、人に伝えることができないからだ。
皆さん、ちょっと目をつぶってみてください。まず、小机城址を目に浮かべて、太田道灌(おおたどうかん)がお城にいます。空堀のところに敵が迫ってきます。鉄砲を打ったりします。自分は死ぬかもしれない、ワクワク、ドキドキ、生きるか死ぬか、歴史にはそういったロマンがある。港北区には素晴らしい小机城址がある。美味しい食べものがたくさんある。まだ広く知られていないかもしれないが、これを今回伝えたいと思う。
具体的にどういうものがあるのか、伝えていく。
まずは、2017年に「続日本の百名城」に選ばれた「小机城」からスタートしたい。
小机城の魅力はなんといっても深い「空堀」にある。ビルディングでいうと4メートルくらいの深さがあって、現在はだいぶ埋まっているので、もう少し深かったのではないかとも言われている。
小田原城の北条氏が作ったと言われているが、そのあたりが魅力。
小机城には天守閣はなく、「館(やかた)」があるというところ。いつでも戦いにいくことができ、いつでも攻められたものというところで、簡単なつくりになっている。建物はないが跡はしっかりと残っている。
横浜の戦国時代は「小机城からスタートする」と歴史家の先生は語っている。
城というものは「土から成る」と書くが、土はとても魅力がある。現地に行って土に触れてみてほしい。縄張りを見ると分かるが、斜面がどうしてこんな斜面になっているのか。土がどうしてこんな盛土になっているのか。土が盛ってあるところも、わざとカーブしている。なんでカーブになっているのか。守るのに何かいいことがあるのか。そんなことを考えながら500年前に戻ってみるとタイムスリップしてみると、すごく面白いのではないか。
ただ、小机城は発掘調査が充分にされていないので、今も分からない部分は多い。
分からないだけに、いろいろなロマンが生まれる。いろいろな夢を張り巡らしてみる。
そういうことが楽しいのではないかと思っている。
今「小机城」に特化して話したが、区内には小机城以外にも10くらいあったお城の名前をご存じだろうか。
まずは「篠原城」。ここは舞台作品「幻の篠原城」にも取り上げられ、港北公会堂で上演された。
その他にも「大曽根城」「吉田城」「矢上城」「高田城」「亀の甲城」といろいろある。
もう一つ、縄文時代、弥生時代からの古い地名がある。東日本大震災では、中山のほうで水があふれてしまった。今は中山、新羽などといった地名があるが、古来から「どぶ=土腐」(土が腐る)という地名が古来からずっと言われていた。
昔から残る地名では、日吉の日大高校(箕輪町)の近くに「日吉舟下」という地名があるが、綱島街道の横に舟が止められる場所がなんであるのかというと、田んぼの稲を舟で運んでいたということ。
古来からある地名をもっともっと皆さんに知ってもらいたい。
区内の珍しい地名で言うと、「神隠(かみかくし=新吉田)」、「御霊(ごりょう=新吉田)」、「蛇袋(じゃぶくろ=現在の新横浜周辺)」、「貝塚(新吉田)」といった地名もある。
日吉の箕輪町では、「日吉米」と呼ばれているお米が作られているのをご存じだろうか。1件だけ売っているところがある。
そういった皆さんが知らないお城や地名といったことを、街歩きなどを通じてPRしていきたいと考えている。
私自身は、横浜市港北区の「地名と文化の会」に入っている。
会長が亡くなられたので会もなくなったが、かつて地名と地図(と掲示)を1部1000円で販売していた。
また復活してPRできたらと考えている。
いきなり町工場の話になるが、なぜ歴史から町工場を取り上げるにいたったかであるが、「港北区の魅力」を考えたときに、港北の「ものづくり」というものの話題がすんなりと出てきた。
区内では「港北オープンファクトリー」という見学イベントが定期開催されているように、さまざま会社や工場がある、古くて新しい会社も多彩だ。
お城や区内を巡っているとき、それだけではつまらないので、せっかくだからこういう町工場の技術を使って、いろいろな歴史グッズを作りながらコラボレーションをすればつながりも広がってくるのではないか、お城を学ぶときも楽しくなるんじゃないかな、とそんなことを考えている。
小さなものづくり工場を舞台にした「下町ロケット」というドラマもあったが、港北区でもロケットの部品を作っている工場があるということを私も聞きまして、それもびっくりした。
そうした街であることも知ると、ワクワクするのではないか。町工場は一つテーマになるのではないかと思っている。
でも、歩いているとお腹も空いてくるので、次、そろそろ食べものに関して紹介する。
区内にはまだたくさん美味しいものがある。実際に売られているものでは、「小机城址最中(もなか)」(小机町)、「つり鐘最中」(日吉台中学校の至近にある和菓子店)などが知られている。
既存のものが売れているのはいいことだが、これから私たちは次のような食べものを作っていこうではないかと考えた。食べもので魅力を発信し、商店街とかもっともっと盛り上がってほしい。
たとえば、「武将ラーメン」とか「小机そうめん」とか、そういったものを考えて、商店街の活性化につなげていきたいと考えている。
これらの情報をどうやって伝えるか。例えば物理的には、小机駅前に情報拠点やカフェを設け、例えば先ほども出た小机城のキーホルダーとか、そういうグッズを売ったらどうか。ちゃんとしたお城があるのに、観光案内がないよね、というのが現状なので、そういう部分からまず物理的にやりたい。
それから子どもたちには学校経由でつなげていきたい。
映像はポータルサイトで発信していき、SNSで新着情報を発信するというのは、今年実現できそうな勢いで行っている。
それでまとめなのですが、私たちのゴールとしては、まずは私たちが港北区の魅力をまずは知る、その魅力を発信、そして魅力のある港北区を再発見してもらう。
それで、「I(ラブ)KOHOKU」と書きましたけれど、港北区を愛する人をどんどん増やしていこうということが最終ゴールかなと思っている。
………………
<参加者質問・コメント1>
全く港北区のことを知らなかった、と思った。新しい発見があった。こういうものがあるんだ、ということを知る機会が普段生活しているとなかなかないので、もっとこういうところは発信して、イベントとかも港北区主催でもっともっと行ってもらいたい。
あと、映像といえば、今は「YouTube(ユーチューブ)」は子どもたちはすごく見ているので、その中で発信できる。例えば、子どもがレポートするとか、レポーターになっていろいろなところに行ってみるとか、そういう子ども向けの番組があったらいいな、と思った。
<参加者質問・コメント2>
去年孫と一緒に小机城の祭りに行ってすごくびっくりした。全く知らなかった。本当に楽しい一日を過ごさせてもらった。今この発表を見て、お城がそんなにあったんだと。新しい発見があった。
<参加者質問・コメント3>
岸根町の町内会長をやっているが、その地域を愛するというのは、歴史から始まるのではないか、といつも思っている。
もちろん、もの、そして美味しい食べものも大切だとは思うが、平井先生がいるから(歴史が)深まっていくとは思うが、その土地、あるいはその地域、地域の歴史が明らかになってくると、また愛着度も増すのではないか。
<参加者質問・コメント4>
個人的に「I(ラブ)KOHOKU」のステッカーを作ってほしい。若い世代、最近自分のシールをパソコンなどに貼るのが流行している。貼っていくと広がっていく。
歴史のものを作っていくときにライセンスなどが気になる。太田道灌などといった名前を使ってグッズを作ることについての制約があるのか。
<発表者回答・コメント>
ライセンスなどの件だが、小机城の場合は何かあったら区役所に相談している。
お城の城印(御城印)がパシフィコ横浜の大型イベント「お城EXPO(エキスポ)」でも人気になっていた。今、私たちも歴史博物館と一緒に作ろうと言っている。鶴見区の「寺尾城」はもう作っていて、来週11日に発売するらしい。
<司会者回答・コメント>
商標登録は先着順となっている。(地名などで)区内で登録されているものは数少ない。大手企業などもどんどん小さな企業が産み出したものなどを使い、登録してしまうケースも見受けられる。
ぜひ地名入りのもの、プラスで「マーク」などを付けることが望ましい。また、商店街など正規の公益的な団体が申請すると通りやすくなると思われる。
一個人の申請、また「日吉」など、全国にある地名などは、通りにくいことも。
商標関連の仕事をしている人も地域にいるはずなので、まずは「地域ブランディング」にもトライしてもらいたい。
分類などもいろいろあるので、まずは調べてもらいたい。
<別分野のアドバイザー・小泉氏>
地域の歴史とか地域にかかわるものは、情報が分散していてもったいないなと思った。樽町には小学校がなく、大曽根小学校や師岡小学校に進学する。昔は工場ばかりだったので、子どもたちが樽町の歴史を学ぶ機会がない。
大曽根小学校では大曽根の歴史や探訪が中心になるので、樽町が取り残されている。
この前、綱島温泉の石碑が樽町の大綱橋近くへ移設されたことで、地元のことを子どもたちに話せる機会が増えてきた。
子どもたちがやはり「ふるさと」と思うには、港北区とか樽町とか、あるいは小机って何?と聞かれたときに、やはり(親や大人が)答えられないと愛着もわかない。そこはしっかりと情報を発信する必要があるのかなと思った。
<別分野のアドバイザー・黒須氏>
「文化」というのは日本社会で見過ごされてきたキーワードだと思う。今、私は高田町の農家さんと野菜を売るというような仕事もしているが、ただのキャベツよりは、文化の価値として上乗せしたらもうちょっといいものになるのではないか。横浜のストーリーを紡ぎだすということも考えている。
一方で、仕事で京都や奈良の街づくりに関わっていると、同地はめちゃくちゃ古い。飛鳥時代とか奈良時代とか平安時代など、古さでいったら絶対勝てない。
「横浜らしさ」のストーリーを紡いていくところが大事で、かつ今はモノ消費からコト消費に変わってきているので、ブレークスルー(現況を打開するようなもの)が出てきたらもっと素敵なものができそうだなと思った。
<別分野のアドバイザー・鈴木氏>
横浜市や港北区にお城があるということだけでも、なんかみんながびっくりする、そういうことだと思う。お城という字が「土から成る」と書くという発表があったが、そういうことだけでもワクワクすると思う。
"歴史物"というのは、シニアの男性たちに地域へ出てきてもらうのにすごく有効だ。また、さきほど話に出たが、「子どもたちがつながっていく」というのはとても大事だと思っている。
YouTubeを作るというのも面白い、来年の「地域のチカラ応援事業」でどうか。
<別分野のアドバイザー・佐藤氏>
港北区の歴史とか結構調べていたつもりだったが、知らないことがいっぱいあって、勉強になった。
キーホルダー作ったり、いろいろなグッズ販売したり、新たなグルメの考案などすごい経済効果をもたらすのではないか。それには、「地元愛」がやはり多ければ多いほどたくさん売れると思う。
各観光都市などでも「YouTube」はとても流行している。どこかへ旅しようと思うと、その町の紹介がシリーズという3分くらいの動画が多数出ているので、「港北区の魅力発信」でYouTubeをやるのは良いことだと思う。
<担当アドバイザー・平井氏>
「お城」でとりあえず話がまとまったが、港北区全域に散らばっているとか、巻き込めるコンテンツって何だろう、となったときに、たまたまお城好きで、お城に詳しい人が集まっていたので、お城ということになった。
区内に10カ所くらいにあって、区域全体に万遍なく散らばっているので、区内全域の町内会や商店街など、周辺の工場までをも巻き込めるということで話がまとまった。
ぜひ実現していきたいと思うので、皆さんの協力をいただきたいと思う。