港北つなぎ塾トーク

つなぎ塾トーク<第7回:港北区の魅力発信に携わるみなさん>

地域をつなげる場づくり、IT活用イベントも

新型コロナウイルスの影響で、地域活動のスタイルに変化が迫られています。「港北つなぎ塾」でも毎年冬に一同に集まる形での連続講座はいったん中断し、区内における地域団体の現状と対策法を実際に活動されている方々に尋ね、文章や画像などの形で情報を共有していく「つなぎ塾トーク」を2020年10月から2021年1月まで全7回にわたって行いました。

 

コロナにどう打ち克つ? 港北区の魅力発信

~いまこそ「地域の魅力」を発信、コロナに負けないネットワークづくり

 

港北区には日本を代表するスポーツやエンタテインメントの場として、日産スタジアム横浜アリーナがあり、観光地としての「新横浜ラーメン博物館」も含め、東海道新幹線の主要駅である「新横浜」は高い知名度を持ちます。

 

また、慶應義塾大学のキャンパスをはじめとした文教施設が多い「日吉」や、再開発と新駅開業で注目される「綱島」、閑静な住宅地として評価が高い「大倉山」、交通の要衝である「菊名」、寺院を中心に自然が多く残る「妙蓮寺」、著名なものづくり企業が集積する「新羽」など、主要な鉄道駅のあるエリアだけでも語りつくせないほどの特徴や魅力を持っています。

 

しかしながら、2020年2月下旬以降の新型コロナウイルスの影響で集客は困難な状況となり、地域のイベントもリアルではなかなか開催できない状況のなか、より一層の情報発信力地域とのつながりによる対応力が求められる事態となっています。

 

区内外の地域コミュニティにおけるイベントの開催や インバウンドといった観光などの人的交流も難しい今、あえて港北区の魅力を発信するにはどうしたらよいのか、その実例などを5人の方にお話しいただきました。

つなぎ塾トークの最終回となる第7回は当初、「大倉山記念館」(大倉山2丁目)での開催を予定していましたが、2021年の年初から首都圏などに「緊急事態宣言」が出されたため、急きょオンライン会議システム「Zoom(ズーム)」を使用した方法に変更しています。

 

港北区内で地域活動や商業施設の運営などを担う5人の方々にオンライン会議に参加していただき、地域の魅力を発信するうえで、新型コロナ禍での苦労や活動の現状、今後の展望などをテーマに話を伺いました。

 

今回の収録は2021年1月13日に実施し、記事は2月15日に公開しました)

 

<お話を聞いた方々>

 <司会・構成>

  • 港北区地域振興課 地域力推進担当
  • 一般社団法人地域インターネット新聞社(横浜日吉新聞・新横浜新聞)
  • 写真:横浜日吉新聞・新横浜新聞撮影

)今回の司会・進行は地域インターネット新聞社が行いました

 

1.港北区など地域と参加者の関わり

 

大倉山・大曽根・師岡・日吉などの区内で活動

 

<司会>

 

本日は港北区や区内の各地域で、その魅力を発信し続けておられる5人の皆さんに区内各所からインターネットを通じてお話しいただくことになりました。当初は大倉山記念館に集まっていただく予定でしたが、緊急事態宣言中ということで、オンライン会議システムの「Zoom(ズーム)」を使って開かせていただきます。

 

それでは、簡単に自己紹介をお願いできればと存じます。まずは大倉精神文化研究所の林さんからお願いいたします。

 

 

<林 宏美さん:大倉精神文化研究所研究員>

大倉精神文化研究所・林さん
大倉精神文化研究所・林さん

大倉山記念館で活動している公益財団法人の「大倉精神文化研究所」で研究員をつとめている林です。現在は出身地の小田原に住んでおりますが、以前は大倉山に近い樽町に住んでいました。結婚を機に泣く泣く小田原へ戻り、大倉山まで通っています。

 

私は生まれが1982(昭和57)年なのですが、偶然にも大倉精神文化研究所を創設した大倉邦彦(1882年~1971年)の誕生日とぴったり100年違いで、研究所の創立記念日とも半世紀違いです。運命的な何かを感じて研究所の仕事に楽しく取り組んでおります。

 

「精神文化研究所」の“精神文化”とは何か、という点を尋ねられることが多いのですが、「歴史」「哲学」「宗教」「教育」「文学」「芸術」といった人間が精神的な活動で生み出す文化を総称した言葉です。

 

科学技術は“物”で人の生活を豊かにしていくものですが、精神文化、つまり心を豊かにすることで生活や社会を良くしていこう、との思いから、事業家で教育者の大倉邦彦が大倉山(当時は太尾町)の丘を切り拓き、今から約90年前の1932(昭和7)年に研究所と附属図書館(現在の大倉山記念館の建物)を開設しました。

創設者の大倉邦彦氏を紹介する大倉山記念館と大倉精神文化研究所のパンフレット
創設者の大倉邦彦氏を紹介する大倉山記念館と大倉精神文化研究所のパンフレット

大倉邦彦は大正期から昭和の戦前にかけて活躍した事業家ではありましたが、東洋大学の学長をつとめたり、複数の学校を作ったりと教育活動に傾注し続けました。なお、苗字は同じですが、ホテルオークラでも知られる「大倉財閥」との関係はありません。

 

2012(平成24)年に精神文化研究所が「公益財団法人」となる際、事業の柱である「精神文化に関する研究」に加え、「地域における歴史・文化の研究と普及」という事業を2番目に取り入れまして、研究所が位置する港北区での歴史や文化に関する研究も行っているところです。

 

その研究成果としては、1999(平成11)年から区民活動支援センターの情報誌『楽・遊・学』で、「シリーズわがまち港北」という連載を2018(平成30)年まで19年超にわたって続け、『わがまち港北』という3冊の書籍にまとめています。

 

また、大倉山で新聞販売店さんが発行している広報紙にも「大好き!大倉山」という連載を行ったり、地域からの原稿執筆や講演のご依頼にお応えしたりと、研究所長の平井誠二とともに地域で活動をさせていただいております。

 

<司会>

 

ありがとうございます。林さんも書籍『わがまち港北』の執筆者となっておられますし、特に研究所長の平井誠二さんには区役所をはじめ、区内団体で講演や執筆をいただいたりとお世話になっている人が多いのではないでしょうか。

 

大倉山の地で「精神文化」という奥深い世界の研究活動を90年近く続けながらも、研究所の創設当初から市民に開放している附属図書館をはじめ、地域に目を向けていただいていることに感謝しています。続いて、大曽根の飯塚さん、よろしくお願いいたします。

 

 

<飯塚 隆子さん:大曽根地区主任児童委員・「ハートフル大曽根」運営メンバー

大曽根地区主任児童委員・飯塚さん
大曽根地区主任児童委員・飯塚さん

私は生まれも育ちも大曽根です。結婚して主人の転勤で13年ほど離れた時期もありましたが、今は大曽根の実家で暮らしています。

 

2008(平成20)年から大曽根地区の「主任児童委員」をつとめさせていただいていまして、2011(平成23)年以降は区の地域福祉保健計画「ひっとプラン港北」の策定や推進を大曽根地区で担う委員会「ハートフル大曽根」にも参加しております。

 

昨年(2020年)度からは地元町内会の会計担当もさせていただいているところで、町内会のことも深く学んでいきたいと思っているところです。

 

区内の各地域に「民生委員・児童委員」は数多くいらっしゃいますが、そのなかで子どもに関する支援を専門に担う「主任児童委員」は区内に44人いまして、その一人として、地域の「赤ちゃん会」のお手伝いや、未就園児とその保護者のための「おおそねちびサロン」などを開催しております。

 

また、学校や保育園や区役所の地域担当の保健師さんなどとともに、地域のお子さんと家庭に関する情報共有し、必要に応じて見守りだったり、関係機関への橋渡しをしたりといった活動も行います。

 

大曽根の民生委員・児童委員が所属する「大曽根地区民児協(民生委員児童委員協議会)」の一員として、毎年秋には「大曽根みんなの福祉まつり」という地域の祭りに参加させていただいたり、高齢者向けのお弁当配達のお手伝いをさせていただいたりしています。

「ハートフル大曽根」のホームページ
「ハートフル大曽根」のホームページ

先ほど申し上げた「ひっとプラン港北」の推進委員会である「ハートフル大曽根」では、情報発信・交流のグループに属し、月刊の情報紙『ザ・ニュース大曽根』や年に一度のイベント情報紙『大曽根地区イベントカレンダー』を発行したり、地域の小さなお子さんを持つ世帯向けの『大曽根周辺 子連れおでかけマップ』を作ったりと、“紙”で情報を発信するとともに、ホームページの運営も担っております。

 

また、2019年からは「おおそねハートフルコンサート」という地域の方による地域交流のためのコンサートを新たに始めたのですが、残念ながら2020年は開催ができませんでした。新型コロナウイルスの影響で第1回で止まっていますが、今後も続けていきたいと考えています。

 

また、取材も兼ねて大曽根地区のイベントにはほぼ顔を出し、お手伝いなどをさせていただいております。

 

<司会>

 

ありがとうございます。国の公職でもある「主任児童委員」を中心として、多彩な地域活動を担われていることに驚かされました。大曽根の皆さんが作られている「ハートフル大曽根」のホームページは秀逸で、住んでいる方はぜひ定期的に見ていただきたいと願っているところです。続きまして、港北ふるさとテレビ局の伊藤さん、お願いいたします。

 

 

<伊藤 幸晴さん:港北ふるさとテレビ局代表>

港北ふるさとテレビ局・伊藤さん
港北ふるさとテレビ局・伊藤さん

私は出身が東京都港区で、結婚を機に1987(昭和62)年から港北区民となりましたので、もう30年以上が経ちました。最初は大倉山に住んでいましたが、今は日吉に住んでおります。

 

大学卒業後は、衛星通信の中継に関わる仕事を皮切りに、携帯電話の通信技術面や、テレビの伝送といった業務を担う企業でサラリーマンをしていましたが、最後に所属した会社がたまたま外資系だったので副業が可能ということになっており、好きだった映像撮影の仕事も別にしていました。

 

やはり好きな映像撮影の仕事を本業に、ということで2015年に“脱サラ”して映像専業となりました。現在は川崎市の文化財団などからテレビ関連業務を担うといった仕事を主にしています。最近は音楽のライブ中継のご依頼も多くいただきます。

港北ふるさとテレビ局のホームページ
港北ふるさとテレビ局のホームページ

地域活動の「港北ふるさとテレビ局」ですが、こちらはサラリーマン時代の2009(平成21)年、区の「ふるさとサポート事業」(現「地域のチカラ応援事業」)の支援をいただき、自分の住む港北区の地域を題材に映像作品の制作を始めたことがきっかけでした。

 

現在、港北ふるさとテレビ局として300本くらいの映像作品がありして、映像作品を発表する「港北ふるさと映像祭」を2009(平成21)年から定期的に開いています。2019年で9回目となりましたが、2020年は開けていません。

 

<司会>

 

ありがとうございます。作品自体にスポットが当たるので気付きづらい面もあるのですが、区内で歴史や自然に関する貴重な映像作品が数多く作られていて、その多くが「港北ふるさとテレビ局」によるものです。伊藤さんをはじめとした皆さんが作っている、ということを覚えておいていただけたらと思っております。それではトレッサ横浜の三浦さん、よろしくお願いいたします。

 

 

<三浦 久さん:「トレッサ横浜」プレジデント>

トレッサ横浜・三浦さん
トレッサ横浜・三浦さん

私は出身が宮城県石巻市というところでございます。1989(平成元)年にトヨタ自動車に入社しました。東京の調査部とか、名古屋の国内営業部門で主に仕事をしておりまして、直近では1都3県の販売店の担当だったり、北海道の販売店の担当だったりといった経営管理的な仕事をしておりました。

 

縁がありまして一昨年の2019(平成31)年に、今のトヨタグループの「トヨタオートモールクリエイト」が運営している「トレッサ横浜」でお世話になることになりました。

トレッサ横浜は環状2号線の両側に南棟と北棟(写真左)が広がる
トレッサ横浜は環状2号線の両側に南棟と北棟(写真左)が広がる

2019年6月に前館長の栗原郁男がちょうど定年で退任するということになりまして、私が6月末から「プレジデント」と呼んでおるのですが、トレッサ横浜で館長の仕事をさせていただいております。

 

そういう意味では港北区とのつながりは、この仕事をさせていただくことでできたということで、今、区についていろいろ勉強させていただいているところです。自宅は川崎市多摩区にありまして、そこから通勤しております。

 

<司会>

 

ありがとうございます。2008(平成20)年に「トレッサ横浜」がオープンしてから約13年が経ち、誰もが知る大型商業施設となっていて、今はトヨタ自動車さんとの関係を知らない方もいらっしゃるかもしれません。

 

簡単に補足しますと、トレッサ横浜の場所(鶴見区駒岡や獅子ヶ谷と接した港北区師岡町)は古くからトヨタ系の拠点が位置しており、今も「トヨタカスタマイジング&ディベロップメント(旧トヨタテクノクラフト)」という自動車業界で有名な企業が本社を置く、トヨタ自動車と縁の深い場所でして、トレッサ横浜もその一つということになります。

 

トレッサという“街”の魅力や地域との取り組みは、後ほどあらためてお話しいただければと存じます。最後となりましたが日吉商店街の西脇さん、お願いいたします。

 

 

<西脇 秀人さん:港北区商店街連合会理事、日吉商店街協同組合理事>

区商連/日吉商店街・西脇さん
区商連/日吉商店街・西脇さん

日吉の駅前商店街で2002(平成14)年から不動産業を営んでおります。現在は大田区の久が原に住んでいますが、その前は日吉本町在住でした。

 

現在、日吉駅前商店街の「中央通り」に所属し、駅前から放射状に広がる通り(普通部通り・中央通り・浜銀通り・サンロード)と、日吉郵便局がある通り(メイルロード)の5つの通りにある商店主などにより構成されている「日吉商店街協同組合」でも役員をしております。

日吉駅前には普通部通り・中央通り・浜銀通り・サンロード・メイルロードの5つの通り会がある
日吉駅前には普通部通り・中央通り・浜銀通り・サンロード・メイルロードの5つの通り会がある

また、港北区内にある13の商店会(綱島・日吉・小机・大倉山・大曽根・南日吉・下田町・菊名東口商栄会・高田中央商工会・箕輪町商工会・妙蓮寺ニコニコ会・仲手原商栄会・菊名池畔商店街)からなる「港北区商店街連合会(区商連)」でも活動させていただいているところです。

 

簡単ですが、港北区や日吉の街の魅力や活動については、後でお話しできればと思います。

 

<司会>

 

ありがとうございます、宅建協会も含めて役職の多い西脇さんですが、地域では日吉駅前の商店街を中心に活動されており、最近では駅前の歩行空間の確保を議論するため立ち上がった「日吉まちづくり推進委員会」など、商店街を核としたまちづくり面でも行政とともに話し合いを行っていると聞いております。イベント開催なども含め、後でお聞かせいただけたらと存じます。

 

 

2.「港北区の魅力」をどう感じているか

 

「海」以外は何でもある、少し田舎の雰囲気も

 

港北区の新横浜・篠原地区(写真手前)から見た横浜港(写真奥)、海までかなり距離がある
港北区の新横浜・篠原地区(写真手前)から見た横浜港(写真奥)、海までかなり距離がある

<司会>

 

まず最初のテーマです。「港北区の魅力」という面について、普段どう感じておられるか、お一人ずつ伺ってまいります。

 

 

<林 宏美さん:大倉精神文化研究所研究員>

港北区の魅力を「ずばり一言」ということですと、港北区は「海」以外は何でもあるということではないでしょうか。

 

横浜18区の中では最大の人口(35万6000人余=2020年9月)を持っていて、人が暮らす賑わいもありますし、「トレッサ横浜」さんもそうですが、大きなショッピングモールもあれば、個性豊かな商店街もある。横浜の副都心・新横浜には有名な企業が本社を置き、新羽や新吉田、綱島にはものづくり企業が多く見られます。

 

区内の交通網は、東急東横線(日吉・綱島・大倉山・菊名・妙蓮寺)やJR横浜線(菊名・新横浜・小机)、市営地下鉄「ブルーライン」(新羽・北新横浜・新横浜・岸根公園)と「グリーンライン」(日吉・日吉本町・高田)が伸びて発達していますし、さらに「東急新横浜線(相鉄・東急直通線)」(日吉~新綱島~新横浜~相鉄線方面)の開業も控えます。

港北区内の交通網は発達している
港北区内の交通網は発達している

区内のバス路線は東急バス、市営バス、川崎鶴見臨港バスを中心に無数に張り巡らされています。遠くへ移動する場合には、市内で唯一となる東海道新幹線の新横浜駅は区内なので便利です。

 

中世の小机城をはじめとした古くからの歴史もあって、新羽や新吉田などではおいしい野菜や果物が生産されています。日産スタジアムや横浜アリーナのような多くの人が集まる場所もあります。海以外、本当に何でもあるというのは魅力ではないでしょうか。

 

 

<飯塚 隆子さん:大曽根地区主任児童委員「ハートフル大曽根」運営メンバー

港北区の魅力ということですが、長く住んでいるわりには区全体を知っているようで知らないので、大曽根の魅力として話させていただきます。

 

「横浜」というと、多くの方が都会的なイメージを持たれていますが、住んでいると何となく田舎っぽいといいますか、自分の生まれ故郷だから、そう思うのかもしれないのですけれど。

住宅街の大曽根地区でも少し歩けば緑の多い風景が
住宅街の大曽根地区でも少し歩けば緑の多い風景が

ただ、大曽根で生まれ、大曽根に暮らしているため、本当に田舎と言える田舎がないので、あくまでも私のイメージとしての田舎という感じです。

 

<司会>

 

林さん、飯塚さん、ありがとうございます。横浜だけど「海」も「港」もない港北区は、緑の多い丘は魅力の一つといえるのですが、良い意味で“田舎”にも見えますよね。区内に交通網が張り巡らされ、移動至便な住宅街として発展し続ける一方、どこの地域でも、ちょっと歩けば自然が残っているということで、子育て世帯の流入が多いのかもしれません。

 

 

<伊藤 幸晴さん:港北ふるさとテレビ局代表>

 

サラリーマン時代は住んでいても全く気付かなかったのですが、「港北ふるさとテレビ局」の活動を始め、いろいろな方から話を伺ううちに、港北区の魅力というのがどんどん分かってきた。それを映像で伝えていきたい気持ちが年々大きくなっています。

港北ふるさとテレビ局のDVD
港北ふるさとテレビ局のDVD

先ほど、林さんも言われていましたが、何でもあるというのは1つの魅力ですよね。歴史という面で言うと、いわゆる“開港”とともに発展した関内などの市内中心部へ行けば、横浜の有名な歴史はいっぱいあるのですが、港北区には港北区の歴史がある。でも有名じゃないから広く知られていないので、そこを掘り下げていきたい。

 

マイナーだけれども実はいろいろあるよ」というのが、私としては区の魅力かなと思っております。

 

<司会>

 

ありがとうございます。港北ふるさとテレビ局の映像作品である「綱島温泉物語」や「新横浜50歳の写真集」「港北の伝統芸能『岸根の獅子舞』」「港北の昔ばなし紙芝居『港北区の横綱 武蔵山』」「つなしま桃物語」「手作り舟で鶴見川を漕ぐ~鶴見川舟運検証の記録」など、タイトルをいくつか挙げるだけで、港北区の歴史の奥深い部分や伊藤さんの思いが伝わってきます。

 

 

<三浦 久さん:「トレッサ横浜」プレジデント>

 

人口が増えていて出生数は横浜でも一番多い区であるということは日常から感じております。人口が流入してくるだけでなく、自然に増えているわけです。私どものトレッサにも、子育て中のお客様が大変多くいらっしゃるので、自然と活気が出てきます。

 

また、ボランティア活動をされている方々が多いということも特徴ではないでしょうか。

昨年(2020年)4月に新設された「師岡トレッサ学童クラブ」
昨年(2020年)4月に新設された「師岡トレッサ学童クラブ」

今年の4月にトレッサ横浜内で「学童クラブ」が新たに開設されたのですが、ここは師岡町や樽町など地域の方々が委員会をつくって立ち上げ、運営されています。地域の力でこうした施設を設けるというのは非常にめずらしく、素晴らしいことだと感じております。

 

<司会>

 

ありがとうございます。三浦さんが指摘されましたように、2019年のデータですと横浜市の出生数は港北区(3484人)が市内トップで、続いて多いのが鶴見区(2359人)です。両区の境に位置し、2区からの来訪者が6割を占めるトレッサ横浜は、まさに子育て世代にとって欠かせない場所となっている気がしました。

 

 

<西脇 秀人さん:港北区商店街連合会理事、日吉商店街協同組合理事>

 

私が拠点としている日吉駅前で言いますと、駅前には慶應義塾大学(日吉キャンパス・矢上キャンパス)や慶應高校、商店街側には慶應普通部(中学校)があり、箕輪町には日大高校・中学校が置かれていて、区内外から学生・生徒さんが集まってきますので、活気があります。

新型コロナ前は学生であふれていた日吉駅前(2019年4月)
新型コロナ前は学生であふれていた日吉駅前(2019年4月)

一方で、街の活動も活発で、自治会・町内会やボランティアなどの団体など、地域の色んな方の顔が見える、という点は魅力ではないかと感じております。

 

<司会>

 

ありがとうございます。日吉駅周辺は慶應義塾と日大高校・中学校へ通う中学生・高校生・大学生に加え、駅前には全国系から地元系まで著名な「学習塾」が多数ありますので、放課後には周辺エリアから小学生も多く訪れ、街の平均年齢がさらに下がります。この“若さ”は他の地域には見られない特徴といえそうです。

 

 

3.新型コロナ前の地域活動

 

五輪の“おもてなし”意識したイベント挑戦も……

 

<司会>

 

昨年(2020年)2月以前、新型コロナウイルスの影響が及ぶ前のみなさんの日常的な活動について、それぞれお話しいただけますでしょうか。

 

 

<林 宏美さん:大倉精神文化研究所研究員>

 

地域の歴史・文化の研究と発信という点では、原稿の執筆や講演、またはイベントの開催などが大きな活動となっています。ホームページやTwitter(ツイッター)で広く発信することも大事な仕事の一つです。

 

歴史を調べている学生さんから問い合わせを受けたり、「学校でお話を」みたいな話も来たりして、つながりが生まれるきっかけになっています。

港北三大祭りの一つとされる「大倉山観梅会」(2019年2月)
港北三大祭りの一つとされる「大倉山観梅会」(2019年2月)

大倉山記念館の中で行われる年に一回の「大倉山秋の芸術祭」や、年2回の開放イベント「大倉山記念館オープンデイ」、2月に大倉山公園で開かれる「大倉山観梅(かんばい)会」といった地域イベントの際は、研究所でも連携して関連のイベントを開いています。

 

また、「港北昔ばなし紙芝居たまてばこ」さんに紙芝居の実演をお願いして区の歴史を伝えたり、伊藤さんの「港北ふるさとテレビ局」さんには映像を作っていただいたりと、地域とつながりを持ちながら活動を展開しているところです。

 

<司会>

 

ありがとうございます。大倉山周辺以外の方には少し分かりづらい部分もあるかと思いますので、補足させていただきますと、梅林もある広大な「大倉山公園」のなかに横浜市の「大倉山記念館」が建っていて、その記念館の建物内に公益財団法人である「大倉精神文化研究所」と附属図書館が入っている、という関係になります。

大倉山公園内にある「大倉山記念館」
大倉山公園内にある「大倉山記念館」

もとは創設者の大倉邦彦さんが私財をなげうって設立された「大倉精神文化研究所」の敷地と建物として使われていましたが、創設者が亡くなられた後に研究所の“経営危機”もあって、1981(昭和56)年に横浜市が土地を買い取って「大倉山公園」とし、研究所から寄贈を受けた建物は「大倉山記念館」として市民施設に変えた経緯があります。

 

今も研究所は独立した別組織ですが、そうした歴史もあって記念館と連携してイベントを行ったり、市民に研究所の附属図書館を開放したりしています。

 

 

<飯塚 隆子さん:大曽根地区主任児童委員「ハートフル大曽根」運営メンバー

 

地域活動を少し振り返ってみますと、地元の大曽根小学校(大曽根2丁目)がきっかけでした。私も卒業生なのですが、子どもが通っている時にPTA活動をさせていただき、その時に地域イベントのお手伝いに行ったら、すごく楽しかったんですね。大曽根小出身の方が多く、昔話で盛り上がって、地域活動の第一歩が良いイメージで始まりました。

鶴見川に近い位置にある大曽根小学校
鶴見川に近い位置にある大曽根小学校

PTAを卒業した後に主任児童委員の依頼があったので、「何か楽しそうだ」と引き受けさせていただいて、その後はどんどん活動の幅が広がって、まさにのめり込んだという感じです。

 

その一つが「ハートフル大曽根」で、自分たちの町のために自分たちができることをやろうということで、集まっています。

 

ここには、地元の大曽根自治連合会や社会福祉協議会、民児協(民生委員児童委員協議会)、その他の委員さん、青少年指導員さんやスポーツ推進委員会さん、大曽根小のPTAも加わっています。また、障害者の地域活動支援センター「セサミ香房」(大曽根1丁目)さんも参加いただいています。

 

地域で活動されている方が結集する場となっていますので、特に交流と情報発信に力を入れているところです。

 

情報発信の面では、広報紙の『ザ・ニュース大曽根』やホームページでの地域イベント・活動の紹介を通じ、色んな団体の活動を知ることができ、ネットワークづくりの面でも役立っております。

 

<司会>

 

ありがとうございます。地域活動に楽しさを見出し、さまざまな役割を引き受けていただき、さらにはネットワークも広げるというのはまさに理想的です。どこの地域も担い手不足をどうするかという大きな課題に悩んでおられますので、一筋の希望が見えてくるお話でした。

 

 

<伊藤 幸晴さん:港北ふるさとテレビ局代表>

 

新型コロナ前の活動ということで言いますと、港北区の良い部分をテーマに自主映像作品を制作していくことをメインとしていました。

 

そうした映像作品を年に1回、港北公会堂で「港北ふるさと映像祭」で発表したり、港北図書館(菊名6丁目)では毎月、定期的に上映会を行ったりしていました。

2019年6月の「港北ふるさと映像祭」であいさつする伊藤さん
2019年6月の「港北ふるさと映像祭」であいさつする伊藤さん

私たちがつくった映像だけでは上映作品が足りないこともあり、地元のケーブルテレビ局である「YOUテレビ(YOU TV)」(鶴見川の南側が主にエリア)さんや「イッツコム(iTSCOM)」(鶴見川の北側が主にエリア)さんにも協力いただき、両局がつくった港北エリアの映像作品も上映させていただいています。

 

港北区の映像のポータルサイトとして「港北映像ライブラリ」を区役所などど運営しており、こちらではインターネット上で映像作品が閲覧いただけるようにしています。

 

<司会>

 

ありがとうございます。「港北映像ライブラリ」には過去の作品や、住民の方が提供した古いフィルム映像なども含めて集約され、いつでも観られるようになっていますので、貴重な郷土資料として広く活用いただきたいところです。

 

 

<三浦 久さん:「トレッサ横浜」プレジデント>

 

トレッサ横浜は独自の情報を発信するというよりは、施設を使っていろいろな方に情報発信をしていただくための「場づくり」をさせていただいている立場です。 

新型コロナ禍前はトレッサ横浜の館内外で大小問わず頻繁にイベントが開かれていた
新型コロナ禍前はトレッサ横浜の館内外で大小問わず頻繁にイベントが開かれていた

港北区さんですと、小学生向けの環境防災学習講座「港北水と緑の学校」の展示会や、区制80周年でつくられた「ミズキーダンス」を踊るイベントなど、幼児から小学生向けの企画で使っていただいています。

 

また、子育てNPO団体の方も幼稚園・保育園に関する情報発信イベントなどで活発に活用いただいているところです。

 

<司会>

 

ありがとうございます。トレッサ横浜は約220のテナントが集まった大型商業施設ですが、師岡や樽町など地元の自治会・町内会との防災協定を結んだり、夏には港北と鶴見の自治会・町内会が協力して盆踊りを行ったりと、周辺住民には買物以外でも欠かせない場となっています。

 

また、区の主要道路である環状2号線沿いに位置しているので、車に乗っている方はもちろん便利なのですが、日吉・綱島・大倉山・新横浜の4駅とその沿線から路線バス1本でアクセスできる環境もありがたいと感じます。

 

 

<西脇 秀人さん:港北区商店街連合会理事、日吉商店街協同組合理事>

 

新型コロナ前の日吉における商店街活動で大きなものを挙げますと、2019年秋に駅前中央通りを1日だけ歩行者専用とし、「日吉ハッピーハロウィン」と題したイベントを初めて開催しました。

 

自治会・町内会や小学校、法人会、子育て支援などさまざまな団体、慶應義塾大学ラグビー部のみなさんなど、地元の多くの方に協力いただき、ハロウィンイベントに加え、「ラグビーワールドカップ(W杯)」が日産スタジアムで開催されていたこともあって慶應ラグビー部OBの方に屋外で講演いただいたり、さらには秋だけど「流しそうめん」もやったりしたところ、大いに盛り上がりました。

2019年10月に駅前中央通りで初開催された「日吉ハッピーハロウィン」
2019年10月に駅前中央通りで初開催された「日吉ハッピーハロウィン」

そして去年(2020年)夏は「東京2020オリンピック」の開催ということで、慶應日吉キャンパスでは英国代表チームが事前キャンプを行うので、英国に関連した大型イベントを開くべく、慶應大学の関係者をはじめとした多くのみなさんと準備を進めていたのですが……。

 

<司会>

 

ありがとうございます。日吉の街(日吉・日吉本町・箕輪町・下田町)は人口が多く広いこともあって、一つにまとまってのイベントを行いづらいという面も感じていただけに、2019年の秋に駅前商店街で行われた「日吉ハッピーハロウィン」は驚きの企画でした。

 

ちょうど英国のイングランドチームがラグビーW杯の決勝戦まで残っていたこともあって横断幕を掲げて応援したり、神奈川法人会(大豆戸町)の地元支部では「流しそうめん」の企画を行ったり、子育て団体の方や商店街のみなさんはイベントを運営しながらもハロウィンのコスプレで盛り上げていたりと、集まっていた子どもたちの笑顔が印象に残っています。

 

延期された「東京2020オリンピック」がどのような形となるかはまだ分かりませんが、地域が一丸となって「おもてなし」ができる体制は整った、とハロウィンイベントを見て感じさせられました。

 

 

4.新型コロナ禍の危機と影響

 

2度の緊急事態宣言、迫られる対応

 

<司会>

 

昨年(2020年)の2月下旬以降、新型コロナウイルスの感染拡大により、日本だけでなく世界中で動きが止まりました。夏から秋は少し緩和していたのですが、現在(2021年1月)はまた「緊急事態宣言」が再発令されたこともあって、1年近くにわたって地域・商業活動が満足に行えない状況です。新型コロナ禍の影響や危機対応といった面を教えていただければと思います。

 

 

<林 宏美さん:大倉精神文化研究所研究員>

 

大倉精神文化研究所は財団として独立した組織ですが、横浜市の施設である「大倉山記念館」のなかで活動していますので、市の方針に準じた対応を行うケースはありました。 

「大倉山記念館」内にある研究所の附属図書館と研究所長の平井さん
「大倉山記念館」内にある研究所の附属図書館と研究所長の平井さん

一方で独立した組織だからこそ、自らで判断をしなければならない部分も多く、記念館が閉めることになれば研究所の附属図書館も開けられないのでどうするか、講演会や展示会は開けるのかなど考えるべき点は多く出てきました。

 

春に予定していた連続講演会は翌年度へ延期しましたが、感染状況が落ち着いていた昨年秋に「大倉山秋の芸術祭」が開かれたのに合わせ、コロナ禍になってから初めての講演会を行いました。聴講は今までの当日先着順という形をやめて事前に予約いただく形に変え、定員は記念館の運営方針に従って従来の半分にしました。

 

私たちは研究所でもあるので、外の方に向けたイベントに掛かるはずだった時間を使って、研究活動や資料整理を進めたり、図書館では蔵書点検を行ったりと、今後の発展に向けての準備活動ができたことは幸いだったと思っています。

 

<司会>

 

前回(2020年4月7日~5月25日)の緊急事態宣言時は、公共や民間を問わず施設・店舗に対して広く休業要請が行われましたが、大倉精神文化研究所の図書館は港北図書館とともに、かなりぎりぎりまで開けていて、公共インフラとして図書館が担う役割の重要性にあらためて気付かされたところです。

 

 

<飯塚 隆子さん:大曽根地区主任児童委員「ハートフル大曽根」運営メンバー

 

町内会のイベントはほぼすべてといえるほど中止です。地域活動の拠点である「大曽根会館」(大曽根2丁目)で毎月開いていた高齢者や子供向けの小さなイベントもできませんでした。

大曽根会館では多数のイベントが企画されていたが開催できなかった(『大曽根地区イベントカレンダー』より)
大曽根会館では多数のイベントが企画されていたが開催できなかった(『大曽根地区イベントカレンダー』より)

ホームページ(ハートフル大曽根)はイベントの告知や報告をメインに発信していて、盆踊りなどの祭りの際に閲覧数が多くなる傾向がありましたが、こうした内容が無くなってしまって、どうしようかと考えていました。

 

最近は「回覧板」を見られない方も多くいましたので、この機にホームページへも情報を掲載するようにしたところ、盆踊りや祭礼時よりも閲覧数が多くなったという経緯があります。

 

緊急事態なので、大変なことも多かったのですが、住民の方が地域について目を向けるといいますか、関心を持ってもらうきっかけにはなったのかなと感じています。

 

<司会>

 

ありがとうございます。この「つなぎ塾トーク」の第1回に出ていただいた樽町のみなさんも、普段はホームページに載せていたイベントなどが無くなってしまったことに苦慮し、定期実施している「防犯パトロール」の様子を写真で伝えていると話していました。

 

多くのみなさんが楽しめるイベントなどの内容はもちろんですが、地道な地域活動や生活に必要な情報といったものを発信することの重要性を感じさせられます。

 

 

<伊藤 幸晴さん:港北ふるさとテレビ局代表>

 

映像の仕事の多くが音楽コンサートだったので、収入面では非常に厳しくなり、「港北ふるさとテレビ局」の活動では、上映会もできなくなりました。 

港北区内の映像を集めた「港北映像ライブラリ」
港北区内の映像を集めた「港北映像ライブラリ」

ただ、運の良いことにインターネット上に「港北映像ライブラリ」という公開場所があり、そちらから配信する形に移行しました。また、さまざまなイベントができなくなったことで、「動画撮影」の需要が多くなったという面もあり、そういう意味では大きなダメージは無かったといえます。

 

<司会>

 

ありがとうございます。港北区の区民祭りとして毎年秋に開催している「ふるさと港北ふれあいまつり」が横浜市内では初となるオンライン開催に挑戦し、その際、各自治会・町内会の映像などで「港北ふるさとテレビ局」による制作作品が目立っていたのが印象的でした。

 

 

<三浦 久さん:「トレッサ横浜」プレジデント>

今回の新型コロナウイルス禍では、みなさんご存じのことかもしれませんが去年(2020年)の3月上旬、当館に立ち寄られた方のなかに陽性患者が発生し、当時の基準では濃厚接触者が1000人を超えるというニュースがありました。これがもっとも大きな危機だったと思います。

 

当時はわれわれもあまり知識がなく、4日間にわたって施設を全面閉鎖し、専門業者の方に館内をくまなく消毒していただきました。お客様が情報を欲していることは感じていましたので、起こったことや対策についてはできうる限り公開しました。

最初の緊急事態宣言では政府からの休業要請に応じ、2カ月近くにわたって食品売場以外は休館した(2020年4月)
最初の緊急事態宣言では政府からの休業要請に応じ、2カ月近くにわたって食品売場以外は休館した(2020年4月)

館内のイベントという面で言いますと、多くの方に集まっていただくことが難しい状況になりましたので、盆踊りやスポーツイベントなどの開催は基本的に自粛しております。

 

ただ、展示など静的な企画はありまして、直近でいきますと、地元の師岡小学校さんが、6年生の皆さんが卒業制作で「地域の再発見」というテーマで制作したものの展示会をやりましょうとか、そうした予定はあります。今、できることをやっていきたいと思っております。

 

<司会>

 

ありがとうございます。昨年(2020年)の春頃は世界中の誰もが新型コロナウイルスに対する知識がなく、そんななか、いきなり最前線で対応を迫られたということで特にご苦労されたと思います。

 

そして、「人を集め過ぎてはいけない」という環境下で商業施設を運営していくことも大変なことではないでしょうか。一刻も早く、トレッサで賑やかなイベントを楽しめる状態に戻ってほしいと願うばかりです。

 

 

<西脇 秀人さん:港北区商店街連合会理事、日吉商店街協同組合理事>

 

新型コロナ禍の危機といいますと、2度目の緊急事態宣言が今月(1月8日)出て、まさに今、商店街は危機といえる状況です。夜8時以降は飲食店だけでなく、どこの店も閉じている状態ですので、全然活気がありません。

 

前回の緊急事態宣言時(2020年4月~5月)を思い返してみますと、今よりさらに先が見えないような環境でしたので、日吉の商店街として何ができるのかを懸命に考えました。

駅前にある銀行の協力で場所を借り、各商店のテイクアウト販売を行った(日吉駅前、2020年5月23日)
駅前にある銀行の協力で場所を借り、各商店のテイクアウト販売を行った(日吉駅前、2020年5月23日)

当時は消毒液がまったく手に入らない状況でしたので、消毒や除菌に使う「次亜塩素酸水(じあえんそさんすい)」を各商店に配ったり、駅前でテイクアウトのお弁当を販売する企画を行ったりといった活動を行いました。

 

一方、商店街の結束力という点では、「LINEグループ」を作って情報共有を行える環境となるなど、強化ができた面はあります。

 

<司会>

 

ありがとうございます。トレッサさんもそうですが、今回のコロナ禍でもっとも影響を受けたのが商店の皆さんではなかったでしょうか。特に飲食店は今も大変な苦労をされています。

 

ただ、今あったように、今回のコロナ禍を経て、商店街の結束力が高まったという部分は少し嬉しいお話でした。

 

 

5.新型コロナ禍でのIT活用や情報発信

 

オンラインで地域イベントに挑戦も

 

<司会>

 

コロナ禍での情報発信をどのように行っていたかや、工夫をされた点、地域との連携といった話をお聞かせいただければと思います。

 

 

<林 宏美さん:大倉精神文化研究所研究員> 

附属図書館の開館状況やイベントの告知などの情報発信はホームページを中心に活用しています。SNSはTwitter(ツイッター)でも同じ情報を発信したり、加えて所蔵している資料の紹介や、大倉山記念館周辺の様子、例えば「記念館から見える富士山がきれいでしたよ」とか「今、ライトアップしていますよ」みたいなちょっとした情報も発信しています。

 

また、最近では古い絵葉書など、研究所に所蔵する資料を「デジタルアーカイブ」としてインターネットで見ていただけるようにする取り組みは強化しています。

大倉精神文化研究所ではインターネット上で所蔵資料などを見られるよう作業を進めている(同研究所ホームページより)
大倉精神文化研究所ではインターネット上で所蔵資料などを見られるよう作業を進めている(同研究所ホームページより)

家にいながら研究ができるような環境を整えるデジタルアーカイブの整備、資料へのアクセシビリティ(利用しやすさ)の強化というのは、より強い問題意識を持って、進めていかなければと考えているところです。

 

<司会>

 

ありがとうございます。大倉精神文化研究所の附属図書館は来年で90周年ということで、横浜市内では中央図書館(1921=大正10年開館)の次に古くからの歴史を持ち、ここにしかない貴重な資料が多く所蔵されていますので、デジタルアーカイブの整備は多くの方に喜ばれるはずです。

 

 

<飯塚 隆子さん:大曽根地区主任児童委員「ハートフル大曽根」運営メンバー

 

私も大倉精神文化研究所さんのTwitterはいつも見ています。家から近いので大倉山周辺の写真が公開されていると親しみを感じます。

 

ITの活用という面ですと、引き続き「ハートフル大曽根」のホームページでの情報発信は続けていくことに加え、もうちょっとTwitterにも力を入れたいなと考えているところです。

 

先ほどお話にありましたが、2020年は「ふるさと港北ふれあいまつり」がオンライン開催となりまして、大曽根地区でも港北ふるさとテレビ局さんに地域を紹介する映像作品を作っていただきました。見ていただいた方から「本当に面白かったよ」とか「よくできているよね」などの声をいただけたのは良かったです。

2020年の「ふるさと港北ふれあいまつり」で公開された大曽根地区の映像作品「大曽根10のひみつ」(YouTubeより)
2020年の「ふるさと港北ふれあいまつり」で公開された大曽根地区の映像作品「大曽根10のひみつ」(YouTubeより)

また、市の市民局が自治会・町内会向けにIT講座を開いていて、私たちも参加しています。初めはなかなか参加者がいらっしゃらなくて、みんな「えー、無理でしょう」みたいな感じだったんですけど、いろいろ声掛けをさせていただいて、参加者は19名まで増えました。

 

実際にやってみたら本当に皆さん好評で、楽しそうに使っていて、早速「LINEグループ」を作ったりしたんですが、緊急事態宣言が出された影響で2回目以降は中断しています。こういうことは続けて、インターネットに触れていただく機会を増やしたいなと思っています。

 

<司会>

 

ありがとうございます。今回の「ふるさと港北ふれあいまつり」では港北区内のすべての連合自治会・町内会が映像を発表していまして、大曽根の皆さんによる「大曽根10のひみつ」は、結構面白い作品に仕上がっています。大曽根の街には信号機が1つも無い、というエピソードは、大曽根に長年住んでいる方でもなかなか気付きづらいような難問で、映像を見て「確かに!そうだった!」と唸ってしまいました。

 

 

<伊藤 幸晴さん:港北ふるさとテレビ局代表>

 

情報発信という部分では「港北映像ライブラリ」のなかに“ステイホーム特集”というコーナーを作りました。新型コロナ禍で自宅にいる時間が多くなりましたので、今までは販売していたような動画も皆さんに期間限定で無料で見ていただけるようにしています。 

「港北映像ライブラリ」内に開設中の「STAY HOME特集」
「港北映像ライブラリ」内に開設中の「STAY HOME特集」

新作として、港北区の地域演劇集団スターリンクスによる「オリジナルヴォイスドラマ『小机の重政(しげまさ)』」や、昨年11月に慶應日吉キャンパス内の藤原洋記念ホールで開かれた「港北芸術祭『秋の調べ』」なども追加しているところです。

 

<司会>

 

ありがとうございます。図書館の上映会で公開されているような作品もインターネット上から見られるのはありがたいですね。

 

最近追加された映像作品の「港北芸術祭」の室内楽コンサート映像は、コロナ禍が落ち着いている時に開かれた数少ない区内イベントです。また、「小机の重政」は舞台となった小机の寺院で“静聴会”という形でも公開されたドラマ作品となっており、こんな状況下でも何とかして楽しめるものを、という熱い思いが伝わってきます。

 

 

<三浦 久さん:「トレッサ横浜」プレジデント>

 

お客様への情報発信という面では、Facebook(フェイスブック)やTwitter、Instagram(インスタグラム)といったSNSでの発信を強化していることと、館内ではさまざまなお願い事もあって表示するべき内容が増えていますので、「デジタルサイネージ」(電子看板)を使って、より多くの掲示ができるように努めています。

 

また、現金を使わない非接触でのお買い物を推進するため、スマートフォン決済を強化しようと動いています。 

積極的にインターネットでも情報発信を行う「トレッサ横浜」(ホームページより)
積極的にインターネットでも情報発信を行う「トレッサ横浜」(ホームページより)

このほか、トヨタ自動車などが車の位置情報データを“ビックデータ”として集めていますので、そうしたデータを活用して「どうすれば渋滞を起こさないか」や「告知によって人の動きがどう変わるか」といった実験も行っており、混雑の緩和や密集の防止に役立てていきたいと考えております。

 

<司会>

 

ありがとうございます。トレッサ横浜は港北区や鶴見区だけでなく、横浜・川崎の両市内や世田谷区など東京都内の方も含め広範囲から人が集まる場所です。

 

半径5キロ以内に約100万人、10キロ圏内なら約300万人という規模の人が住んでいるだけに、コロナ禍を経て混雑対策の取り組みもより重要となりそうです。車の位置情報データ(ビッグデータ)の活用はトヨタ系の商業施設ならではで興味深いところです。

 

 

<西脇 秀人さん:港北区商店街連合会理事、日吉商店街協同組合理事>

 

日吉商店街では「Twitter」を運用しており、フォロワー数はまだ500ちょっとで多くはないんですが、新型コロナ以前の1年前などと比べるとページビュー(閲覧数)が上がっています。

 

昨年(2020年)12月16日に慶應大学ラグビー部の方に動画をいただいてアップしたんですけど、インプレッション(表示数)はだいたい2万弱、再生数も3000ちょっとぐらい見ていただきました。

 

また、IT活用という面では、日吉商店街や地域の会合などで「Zoom(ズーム)」の活用は日常化しつつあります。

 

先ほどから、昨年11月にオンラインで開催された「ふるさと港北ふれあいまつり」のお話が出ていますが、横浜アリーナから生中継した「コアデイ」には、私たちも区商連(港北区商店街連合会)として、綱島商店街の中森伸明会長や、南日吉商店街の小嶋純一会長をはじめとした多くのみなさんと一緒に出させていただきました。

 

区内商店街の各店舗から名物やテイクアウトのお弁当などを紹介させていただいたり、生中継には栗田るみ区長も出演し、実際に試食いただいたりして楽しかったです。

 

港北区で初めての試みということでしたが、こういった形でのIT活用も含め、いろいろな方法があるものだと実感しました。

港北区と慶應大学院が初めて開いた「港北オンラインラジオ体操」にも商店街で参加(西脇さん提供)
港北区と慶應大学院が初めて開いた「港北オンラインラジオ体操」にも商店街で参加(西脇さん提供)

また、昨年の夏には港北区と慶應義塾大学の大学院「システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科」の皆さんが主催した「港北オンラインラジオ体操」にも参加させていただき、新たなチャレンジに加われたことも意義深かったです。

 

<司会>

 

ありがとうございます。「ふるさと港北ふれあいまつり」は例年のように自治会・町内会を中心とした模擬店ができなかったのは寂しかったのですが、動画配信サイト「YouTube(ユーチューブ)」の生中継では、西脇さんをはじめとした出演者の皆さんによる軽快なトークが印象に残ります。

 

テレビのニュース番組でも取り上げられた「港北オンラインラジオ体操」を含め、短期間のうちにオンラインでイベントを開催できた経験は、今後の地域活動でも広く共有していただきたところです。

 

 

6.他団体との連携やコラボをどうしたか

 

貴重な歴史も掘り起こしたイベント連携

 

<司会>

 

新型コロナ禍の前後を含め、他の団体との連携やコラボレーションをどのようにしているか、現状についてお話しいただけますでしょうか。

 

 

<林 宏美さん:大倉精神文化研究所研究員>

 

最近の連携では、一昨年(2019年)4月の話になりますが、横浜アリーナさんが30周年記念で開いた大相撲巡業「横浜アリーナ場所」の会場では、神奈川県唯一の横綱で、日吉出身の第33代横綱「武蔵山」(1909年~1969年)に関する展示会を開かせていただきました。港北図書館でも展示会と公開講演会を行っています。 

横浜アリーナでの大相撲巡業時に行った「武蔵山」の展示は人気を集めた(2019年4月)
横浜アリーナでの大相撲巡業時に行った「武蔵山」の展示は人気を集めた(2019年4月)

また、大倉山記念館の指定管理者との共催で、毎年夏には記念館のギャラリーを会場に「オープンギャラリー」を開催しています。

 

オープンギャラリーでは、大倉山記念館や研究所の歴史、大倉山駅や地域のまちづくりに関する展示、研究所で作成した映像と港北ふるさとテレビさんが作成した地域映像の上映などを毎年行っています。今年はコロナ禍ということで、関東大震災や東日本大震災、鶴見川の水害などの災害を乗り越えてきた地域の歴史も取り上げたパネルを新たに作成し、展示しました。

 

コロナ禍もありますので、これから先、どういう形で地域団体の皆さんとつながりを持って活動ができるのかという点は、模索しているところです。

 

<司会>

 

ありがとうございます。横浜アリーナでは18年ぶりとなった2019年4月27日の大相撲巡業は大きく盛り上がり、武蔵山の展示も盛況でしたね。港北図書館で開かれた平井誠二さんによる武蔵山の講演会もすぐに満員となりました。

 

戦前は日本中で人気を誇った郷土出身の横綱に再び光を当て、区内外へ広く知らしめたのは、大倉精神文化研究所と横浜アリーナの連携による功績ではないでしょうか。

 

巡業は昨年(2020年)も4月に開かれる予定で、あわせてさらに深化した武蔵山の研究成果も披露されるはずだったのですが、新型コロナの影響ですべて流れてしまいましたので、次の開催時に期待しています。また、大倉山記念館でのオープンギャラリーは、「知」を発するイベントとして、今年も開催を楽しみにしております。

 

 

<飯塚 隆子さん:大曽根地区主任児童委員「ハートフル大曽根」運営メンバー

 

昨年12月に港北区の商店街全体を歩いてめぐる「こうほくの商店街ちょいより散歩」(11月14日~12月6日)が行われていましたが、その期間中に「大曽根地区こども会」では、大曽根商店街とコラボして「クリスマススタンプラリー」を初めて開きました。

 

子供たちが大曽根商店街の店をスタンプラリー形式で回って、全部スタンプを集めたら商店街から提供されたクリスマスプレゼントがもらえるという企画でした。

昨年12月に大曽根商店街で行われた「クリスマススタンプラリー」
昨年12月に大曽根商店街で行われた「クリスマススタンプラリー」

新型コロナ禍もあって、なかなか室内でクリスマス会ができない中で生まれたイベントなのですが、小さなお子さんには保護者の方も一緒に付いて回って、普段は大曽根商店街になかなか行く機会もない方も、この機に買い物をしている様子も見られ、とても楽しいイベントになりました。

 

最近は大曽根商店街にも魅力的で個性的な商店・飲食店が建ってきていますので、今後も商店街とコラボして、地域の方に知っていただきたいと思っております。

 

<司会>

 

「クリスマススタンプラリー」の当日は天候があまり良くないなかでも120人以上の子どもが参加し、大曽根商店街に小さな子どもたちの姿があふれていたのが印象的です。子どもたちはもちろん、商店街会長や商店の皆さんもすごく喜んでおられ、地域と商店街が子どもたちのために力を合わせた良いイベントでした。

 

 

<伊藤 幸晴さん:港北ふるさとテレビ局代表>

 

港北区の団体の方には日ごろからさまざまな面でお世話になっています。昨年の「ふるさと港北ふれあいまつり」では、地域の紹介映像づくりを通じ、これまでお付き合いのなかった自治会・町内会のみなさんとも接点が持てたことは非常に嬉しいことでした。

港北区連合町内会のホームページでは各地区の映像作品が一覧で公開されている
港北区連合町内会のホームページでは各地区の映像作品が一覧で公開されている

インターネット上の「港北映像ライブラリ」では、歴史だけじゃなくて、芸術やスポーツ、さまざまななジャンルの映像を公開していきたいと考えていますので、多くの団体の協力を得ながら、“映像図書館”のような存在になれればと思っております。

 

<司会>

 

ありがとうございます。YouTubeなどでも検索すれば港北区内に関する映像作品は表示されるのですが、「港北映像ライブラリ」のように一覧になっていて探しやすいのはありがたいですよね。特に今は区内に関係するスポーツの映像が足りないとのことですので、どんな映像でも持っておられる団体の方はよろしくお願いいたします。

 

 

<三浦 久さん:「トレッサ横浜」プレジデント>

 

今も行政や学校、地域のみなさま方とさまざまな形で連携をさせていただいており、今後も無理のない範囲で幅広く行っていきたいと考えております。

 

明日も港北区役所さんと港北区商店街連合会(区商連)さん、昨年(2020年)から新横浜を本拠地としてアイスホッケーのプロリーグに参入した「横浜GRITS(グリッツ)」さんの三者が連携協定を行うということでトレッサ横浜を使っていただく予定でした。(緊急事態宣言の発出によりのちにオンラインで実施) 

トレッサ横浜の周辺は自然や見どころが多い(師岡町梅の丘公園より撮影)
トレッサ横浜の周辺は自然や見どころが多い(師岡町梅の丘公園より撮影)

地域の歴史という話で言いますと、トレッサ横浜では3000人くらいの方が働いていますが、アルバイト・パートの皆さんは入れ替わりが大きく、新しく働いていただく皆さんには新たに研修を行っています。

 

研修の際には、例えば当館が位置する師岡町でいうと、「奈良時代から師岡という地名があったんです」なんていう話をさせていただいているのですが、そういう話題は結構喜ばれるんですね。

 

近隣の方はもちろんですが、通勤で来られる方も「そういうところなんだ」と学びがあるようです。地域の歴史について、いろいろ教えていただいて、発表や説明ができるような場を作っていければいいなと思っています。

 

<司会>

 

ありがとうございます。新型コロナ前の初詣時にはトレッサさんの駐車場も開放していましたが、師岡町内には有名な「師岡熊野神社」がありますし、近くの鶴見区獅子ヶ谷には江戸時代の屋敷が見学できる「みその公園『横溝屋敷』」も置かれています。トレッサ横浜は知る人ぞ知る歴史散策の重要拠点ではないかと密かに思っているところです。

 

 

<西脇 秀人さん:港北区商店街連合会理事、日吉商店街協同組合理事>

 

地域内でのつながりを深める一つのアイデアとして、「地域貢献ポイント」みたいなことができないかと考えているところです。「まちのコイン」というコミュニティ通貨があるのですが、そんなイメージです。 

神奈川県が行う「SDGsつながりポイント事業」のホームページ
神奈川県が行う「SDGsつながりポイント事業」のホームページ

神奈川県では、ポイントを通じて地域のつながりと「SDGs(エス・ディー・ジーズ=国際社会が共通とする目標)」の普及促進を目指す「SDGsつながりポイント事業」という取り組みを鎌倉市や小田原市で行っています。

 

こうした先進的な取り組みを参考にしながら、実現を模索していきたいと思っております。

 

<司会>

 

ありがとうございます。SDGsと言いますと「貧困をなくそう」や「すべての人に健康と福祉を」など設定された17の目標のスケールが大きすぎて、日常生活のなかでなかなか意識しづらい面もあるのですが、“地域ポイント”のやり取りという形で身近に感じてもらい、さらには地域でつながりも深めていく、というコンセプトは良いアイデアです。港北区内でも導入できることを期待しております。

 

 

7.新型コロナ禍を踏まえた今後の目標

 

持続可能な地域のつながりを

 

<司会>

 

内容が盛りだくさんで時間が押してきました。今後の抱負や目標など、今までお話ししてきたことを踏まえ、お一人づつお願いいたします。

 

 

<林 宏美さん:大倉精神文化研究所研究員>

 

大倉精神文化研究所が設立されたのはもう90年も前のことですが、みんなが不安の中にいる状況下でも心豊かに暮らせるようにしたい、という創設者の思いがありました。私たちとしては、そんな思いを受け継ぎ、少しでも前進させられるような活動をしていきたいと考えています。

書籍『わがまち港北3』を区内の市立小・中学校に寄贈した著者の林さん(左)と平井所長(左2人目)(昨年11月)
書籍『わがまち港北3』を区内の市立小・中学校に寄贈した著者の林さん(左)と平井所長(左2人目)(昨年11月)

今回の新型コロナ禍では、外出がままならなくなった状況がありますが、逆に地域を見直す時間、あるいは地域を知るきっかけになればと願っています。私たちも、地域の生活が楽しくなる、愛着を持ってもらえるような情報を発信してまいります。

 

 

<飯塚 隆子さん:大曽根地区主任児童委員「ハートフル大曽根」運営メンバー

 

ホームページを開設した当初より災害時や緊急時に情報共有をできれば、という考えがありました。壮大なテーマなのですが、そうした際に使えるツールの1つとなれるよう目指していきます。

 

一方、現状の課題としては、活動しているメンバーが高齢化しているという点がありまして、次の担い手を探していかなければなりません。そのためには、できるときにだけ参加してもらうとか、オンラインでの参加も可能とか、そうした形も考えていかなくてはならないと感じています。

 

大曽根地区では、今まで空き地だったところに新しい家が建ったり、大きな一軒家が代替わりの際に2軒・3軒分の家に建て替わったりして、若い方もかなり増えています

大曽根地区は長く居住したい意向の住民割合が高い(2020年の「クリスマススタンプラリー」)
大曽根地区は長く居住したい意向の住民割合が高い(2020年の「クリスマススタンプラリー」)

 昨年(2020年)、4年ぶりに行われた「区民意識調査」で大曽根地区の結果は、「港北区に住み続ける」「たぶん住み続ける」の合計が8割(81%)を超えていて、港北区の平均(71%)と比べても高く、すごく嬉しい思いがしました。

 

それだけ地域に愛情を持って暮らす住民が多いわけですので、地域活動にも興味を持っていただけたらと思っておりますし、私たちも興味を持ってもらえるような活動をしていきたいです。

 

 

<伊藤 幸晴さん:港北ふるさとテレビ局代表>

 

新型コロナの影響がどれだけ長引くのか分からないのですが、先ほどからお話ししている「港北映像ライブラリ」や、私たちの「港北ふるさとテレビ局」のホームページも含め、災害時など他の用途にも活用できないかとの思いがあります。この点は長期的に考えていきます。

 

直近の活動で言いますと、先ほどトレッサ横浜の三浦プレジデントから師岡町の歴史について触れていただきましたが、ちょうど師岡では連合町内会が30周年を迎えまして、今、依頼をいただき映像の制作を行っているところです。

 

また、綱島台の旧家で市の文化財にもなっている「飯田家住宅」では、長屋門の茅葺きの葺き替えが始まりますので、この「つなぎ塾トーク」が終わったらすぐに現地へ行って撮影を行う予定です。

「飯田家住宅」の屋根の葺き替えを高所から撮影する伊藤さん(写真左、2019年2月)
「飯田家住宅」の屋根の葺き替えを高所から撮影する伊藤さん(写真左、2019年2月)

このほか、つなぎ塾トークの第5回にも登場されていますが、NPO法人「街カフェ大倉山ミエル」さんと昨年夏に初めて「こどもジャーナリスト養成講座」と題したワークショップをさせていただきました。今度はお父さんやお母さん対象とした講座もできればと考えています。

 

映像制作はもちろんですが、引き続き区内でさまざまな方と連携しながら活動を行ってまいります。

 

 

<三浦 久さん:「トレッサ横浜」プレジデント>

 

私どもとしては、新型コロナ対策をしっかり実施し、安心してお越しいただけるような施設づくりを行ってまいります。

 

加えて、先ほど触れていただいた地域の皆さんとの「防災協定」では、お互いに何ができるのかを具体的に詰めていく作業も必要になってくると考えています。

樽町連合町内会との防災協定締結式でトレッサ横浜の三浦さん(写真左、2020年11月)
樽町連合町内会との防災協定締結式でトレッサ横浜の三浦さん(写真左、2020年11月)

施設の運営面では、インターネットを使ったEコマース(ネット通販)が年々進展していますが、われわれはリアルな施設として、どれだけ魅力を作れるかという点が大事になってきます。

 

港北区さんとの話では「ウォーキングマップ」とか、館内を歩いていただくと、どれぐらい歩けるみたいな、健康づくり面からそんなアイデアも出ているところです。

 

今後も買物だけではなく、さまざまな目的で来ていただけるような施設づくりを行ってまいります。

 

 

<西脇 秀人さん:港北区商店街連合会理事、日吉商店街協同組合理事>

 

新型コロナ禍を踏まえた今後の取り組みということでは、商店街や町内会といった支援型のコミュニティをさらに活発化させるため、コロナに負けないネットワーク、テーマ型のコミュニティを新たに設立しようと思っています。

 

具体的には緑化活動を目的としたネットワークの設立を考えておりまして、緑化を通じて商店街や町内会、地元企業、大学などのステークホルダー(影響を受ける関係者)が一緒に活躍できるような、そういった持続可能な地域のつながりをイメージしています。

「ふるさと港北ふれあいまつり」の生中継では港北区の商店街をアピールした(2020年11月、横浜アリーナ)
「ふるさと港北ふれあいまつり」の生中継では港北区の商店街をアピールした(2020年11月、横浜アリーナ)

また、区商連(港北区商店街連合会)の立場としては、先日の「ふるさと港北ふれあいまつり」のように、区内商店街の魅力を発信できる場を作っていただけると大変嬉しいところです。

 

 

<司会>

 

みなさん、力強いメッセージをありがとうございました。昨年(2020年)10月から区内各地で開いてきたつなぎ塾トーク」も今回が最終回ですが、最後にオンライン開催となりました。2月~3月に聴衆の方を招く形で計画していた「総集編」も新型コロナの状況悪化により、開催できそうにありません。

 

最後に一同でお会いできない環境となりましたが、こうした状況下でも、今日お話を伺えたことに勇気づけられました。新型コロナの影響はまだ続いていますが、みなさんのさらなるご活躍を期待しております。

 

これまで「つなぎ塾トーク」の第1回から第7回まで、ご登場いただいた23人のみなさまをはじめ、ご協力いただいたみなさまに心より感謝申し上げます。「港北つなぎ塾」も新型コロナに負けることなく、近いうちに再び区内でお会いできる日まで、頑張ってまいります。今回もご参加(閲覧)ありがとうございました。

 

(「つなぎ塾トーク」第7回:開催日2021年1月13日=オンライン実施)