つなぎ塾トーク<第5回:シニアの地域活動支援を行うみなさん>

やればできるIT活用、連携と工夫で活動を前進

新型コロナウイルスの影響で、地域活動のスタイルに変化が迫られています。「港北つなぎ塾」でも毎年冬に一同に集まる形での連続講座はいったん中断し、区内における地域団体の現状と対策法を実際に活動されている方々に尋ね、文章や画像などの形で情報を共有していく「つなぎ塾トーク」を個別に始めました。

 

どうする、シニアの地域活動支援

~IT普及はどこまで可能か?活動再開への道のり

 

港北区内で「65歳以上の高齢者のみの世帯」は約3万4000世帯で、この10年間で約1万世帯増え、うち、単身世帯も1万9000世帯と年々増加する傾向にあります。地域では、「家に1人でいるよりも誰かと一緒にいたい」――、そんな思いを形にする居場所づくりの取り組みも広まっています。

 

また「人生100年時代」と言われるなか、定年などで仕事を終えた後、次なる活動のステージとして、自ら住む「地域」を選んでもらうことは重要です。

 

しかし、今年(2020年)春以降、新型コロナウイルスの影響で、居場所づくりや運営、地域とつながるきっかけや広げたり深めたりする取り組みが「ステイホーム」の掛け声のもと、活動を一時休止せざるを得ない状況も続いていました。

 

一方でセカンドキャリアとして地域での活動が期待される世代からは、「在宅勤務が増えて平日の地域の様子がわかるようになった」「以前より自分の街と感じるようになった」という声も聞かれます。

 

高齢層の連絡・伝達手段が「感染拡大防止」の観点で制限されているなか、どのような手段での連絡を試みたか、また日頃から初めて地域に参加する人々をどのように受け止め、活動の担い手の裾野を広げているかなどの成果を探ります。

つなぎ塾トークの第5回は、港北区内でシニア層の地域活動支援を担っている4人の方に集まっていただき、新型コロナ禍を踏まえた活動のあり方や、IT活用への道のりなどをテーマに話を伺いました。

 

今回は城郷(しろさと)地区(小机町・鳥山町・岸根町)の福祉拠点となっている「城郷小机地域ケアプラザ」(小机町)を会場に、次の4人の方々が現状報告と意見交換を行いました。(2020年12月8日公開、11月18日開催)

 

<お話を聞いた方々>

<司会・構成>

  • 港北区地域振興課 地域力推進担当
  • 一般社団法人地域インターネット新聞社(横浜日吉新聞・新横浜新聞)
  • 写真:横浜日吉新聞・新横浜新聞撮影

 

1.港北区との関わりと地域活動の今

 

介護予防の活動や情報の受発信を担う

 

<司会>

 

今回で5回目となる「つなぎ塾トーク」は、港北区内でシニア向けの地域活動支援を担っている4人の方にお越しいただきました。自己紹介を兼ねて現在の活動内容をお聞かせください

 

 

<岩田聡子さん:「居場所づくり濱なかま」代表>

「居場所づくり濱なかま」代表・岩田さん
「居場所づくり濱なかま」代表・岩田さん

 出身は兵庫県の神戸市です。結婚後に緑区の中山に住んでいたのですが、市営地下鉄グリーンラインの建設で立ち退きとなり、同じJR横浜線の沿線で小机駅からも近い鳥山町に引っ越し、現在にいたっています。

 

メインの地域活動としては、鳥山町に「居場所づくり濱なかま」という任意団体を立ち上げ、地域の拠点づくりをめざしています。その一環で、「とりやまの郷(さと)」と名付けたシニアサロンで、歌声喫茶、健康づくり、ものづくり、回想法などの介護予防活動を行っています。

 

これらの活動は、横浜市の介護予防・生活支援サービス補助事業、「通所型サービスB」の対象として、要支援者の方や地域の方にご利用いただいています。

高齢者の介護予防や日常生活支援のなかで、「通所型サービスB」は地域住民のボランティアが主体となって体操や脳トレ・認知症予防といった活動の場を提供する。各家庭へ訪問する「訪問型」も同様のサービスがある(厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業の基本的な考え方」より)
高齢者の介護予防や日常生活支援のなかで、「通所型サービスB」は地域住民のボランティアが主体となって体操や脳トレ・認知症予防といった活動の場を提供する。各家庭へ訪問する「訪問型」も同様のサービスがある(厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業の基本的な考え方」より)

この「通所型サービスB」というのは、介護保険の対象外なのですが、介護予防や生活支援の場を設けることで、高齢者の在宅生活を地域で一体となって支えようという国の仕組みで、2017年から全国的に始まりました。

 

私たちの活動は、同じ小学校に通う保護者と立ち上げた「郷づくり濱なかま」という任意団体で行ってきた、"自分のできることを地域に還元する"という活動からサービスBに発展したものです。

 

私自身はかつてIT企業に勤めていたのですが、父が闘病生活をおくり、亡くなった経験を通じて、社会福祉士(「ソーシャルワーカー」とも呼ばれる国家資格)を目指しました。最期を迎えるというときに社会福祉士さんに色々と相談に乗っていただいたことを機に、「こういう職業を志したい」と思い、ITの仕事を辞めて大学に入り直しました。

 

社会福祉士の実習時に、社会福祉法人横浜共生会(新吉田町)が運営する大豆戸町の「しんよこはま地域活動ホーム」に受け入れていただいたことが縁で、現在は障害者相談支援事業所大倉山相談室にて、計画相談支援事業(障害のある方のケアマネジャーのようなお仕事)にも携わらせていただいています。

 

また、IT業界の経験も生かしながら、“ITで福祉課題を解決する”との目標を掲げ、鳥山町で「凪(なぎ)ライフパートナーズ」という個人事業を営んでいるところです。

 

 

<井上駿さん:横浜市下田地域ケアプラザ>

横浜市下田地域ケアプラザ・井上さん
横浜市下田地域ケアプラザ・井上さん

生まれも育ちもこの(城郷小机地域ケアプラザ)近く、緑区の鴨居でしたので、幼いころから小机のお城なんかはよく遊びに来ており、親しみ深い場所です。

 

最初は、訪問診療の医療事務という仕事に就きまして、同行事務として医師と一緒に家庭を周り、診療の手伝いをしていました。

 

その際、患者さんには高齢の方が多かったのですが、高齢者の方と地域をより強く結ぶ仕事に就きたいと考え、2016(平成28)年から横浜共生会が運営する「横浜市下田地域ケアプラザ」(下田町)で、「地域活動交流コーディネーター」という立場で働いています。

 

 

<本間克之さん:フリーペーパー『えがお』代表>

フリーペーパー『えがお』代表・本間さん
フリーペーパー『えがお』代表・本間さん

生まれは品川区の大井町ですが、6歳の時に都筑区の北山田へ引っ越してきました。まだ市営地下鉄グリーンラインもなく、当時は港北区の一部で、最寄り駅も綱島でした。その後、都内や箕輪町に住み、現在は大豆戸町在住です。

 

大学を出て、医療器具である「カテーテル」を扱う会社に就職したことで医療や福祉との接点ができました。その後も長くさまざまな広告代理店・芸能プロダクションなどの営業の仕事に就いたり、会社を経営したりしていましたが、どうしても「売上」という数字に左右されます。

 

別の視点で仕事をしてみたい、と思っていたところ、縁あって介護の仕事に就きました。「これは人の役に立てる素晴らしい仕事」と痛感することになり、現在も続けています。

 

一方、自分で起業したいとの思いもあり、2018年1月に“プラチナ世代”と名付けた65歳以上の高齢者に限定したフリーペーパー『えがお』を立ち上げました。

 

同じマンションに住む出版社の人と話しているときに「シルバーネット」という仙台市青葉区で刊行している高齢者向けの情報紙を知って、「自分の目指していたことはこれだ!」と思ったことがきっかけです。

 

『えがお』は、「彩りあふれる豊かな生活をもう一度取り戻す」とのコンセプトで毎月1回発行し、港北区内の各施設などで配布いただいています。まもなく創刊から丸3年になります。

 

 

<鈴木智香子さん:NPO法人「街カフェ大倉山ミエル」代表> 

NPO法人「街カフェ大倉山ミエル」代表・鈴木さん
NPO法人「街カフェ大倉山ミエル」代表・鈴木さん

出身は山口県の岩国市です。大学進学時に首都圏へ来ました。その後、建設会社に入って結婚し、夫の転勤で福岡に6年ほどいました。

 

そこで子供が2人生まれ、こちらに戻ってきて川崎市に2年ぐらい住んで、その後は横浜です。ところが3年ぐらいでまた札幌に転勤となったので、北海道で5年を過ごし、以後は大倉山に住んでいます

 

福岡への転勤時に会社を辞めてからは専業主婦でしたが、札幌で公園遊びの会を立ち上げ、横浜へ戻ってからは新横浜でボランティア団体「公園遊びの会おるたん」の活動を行っていました。

 

そんななか、ちょうど10年前の2010年、地元の大倉山で商店街が養蜂(ようほう)事業を始めるということで声を掛けていただき、そのアンテナショップとして「大倉山ミエル」を立ち上げました。「ミエル」というのはフランス語で「はちみつ」(miel)を意味しています。

 

今はあまり知られていないのですが、今から10年前、「蜂の巣箱」を大倉山エルム通り商店会の通りのちょっと山側に3個置いて、養蜂をしていたんですね。1年目は、気温も高く蜂も元気だったこともあり、たくさんのはちみつが採れました。

 

ただ、蜂はなかなか冬が越せなくて、2年目と3年目は新たに蜂を買ってくるなどして頑張っていたのですが、3年目でいったん休止となっています。

 

現在の「大倉山ミエル」は誰もが立ち寄れる街のコミュニティカフェとして運営する一方、岩田さんの「とりやまの郷」と同様に「通所型サービスB」を提供する介護予防の場にもなっています。

 

コミュニティカフェとしては子育て中の方も多くいらっしゃるので、利用者の方はマイナス1歳(妊婦)から101歳までとかなり幅広いですね。

 

余談ですが、シニアの地域活動支援という今回のテーマで言いますと、私自身も最近、地元の大倉山で「港北区老人クラブ連合会」に入れていただきまして、女性部部員として活動を始めました。

 

 

2.「新型コロナ禍」で活動はどうなったか

 

会場や食事確保に苦労、屋外や手紙などの工夫

 

<司会>

 

ありがとうございます。みなさん、各地域で介護予防活動や情報発信などを積極的に展開されていますが、今回の新型コロナウイルス禍では、大きな影響を受けたのではないでしょうか

 

 

今年(2020年)20周年を迎えた下田地域ケアプラザは日吉駅から徒歩約20分の場所にある
今年(2020年)20周年を迎えた下田地域ケアプラザは日吉駅から徒歩約20分の場所にある

<井上駿さん:横浜市下田地域ケアプラザ>

 

下田地域ケアプラザの地域コーディネーターとして、これまで自主的な講座を企画したり、地域の方と一緒にイベントを開いたりしてきました。

 

認知症を正しく理解していただき、自分のできる範囲でさまざまな活動を行う「認知症サポーター」という事業が全国で行われていますが、そのサポーターを増やす「認知症サポーター養成講座」を下田地域ケアプラでも企画しており、これまで地域の住民や民生委員さん、時には近所の日吉台西中学校(日吉本町5)の演劇部の生徒さんと一緒に開催してきました。

 

また、今年(2020年)は8月で下田地域ケアプラザが開館20周年を迎えるので、前年からイベント準備を行っていたのですが……。

 

新型コロナの影響で、そうした企画やイベントは全部流れてしまいました。

 

 

港北区内でも「認知症サポーター」の普及啓発活動が積極的に行われている(横浜市のまちかどケア推進会議による「認知症サポーターガイドブック」より)
港北区内でも「認知症サポーター」の普及啓発活動が積極的に行われている(横浜市のまちかどケア推進会議による「認知症サポーターガイドブック」より)

 

<本間克之さん:フリーペーパー『えがお』代表>

 

私も2016年から「認知症サポーター養成講座」を毎月開いており、特に『えがお』を発行してからは大豆戸町や菊名周辺の会場をお借りし、かれこれ30~40回にわたって開催してきました。今年に入ってからは、横浜市がオンライン開催を認めてからの市内初のオンライン開催を実施した実績もあります。

 

また、今年4月には「トレッサ横浜」(師岡町)さんのスペースをお借りし、地域で活動しているシニアの方が参加して楽しめる企画として「えがおまつり」を開催する予定でした。

 

昨年秋からずっと準備を進めていたのですが、4月7日に「緊急事態宣言」が出され、外出自粛となりましたので、当然ながら開催はできません。最初は6月に延期を決めましたが、それも難しいので再延期となった際にオンラインでの開催を決意しました。

 

「えがおまつり」はオンラインでということで、お手伝いいただく18人の“実行部隊”を組織しました。メンバーは主に30代から50代の人ですが、そのなかに70代~80代の方にも6人ほど入っていただきながら準備を進め、10月11日に無事開催できたところです。

 

 

大倉山4丁目の住宅街にある一軒家を使った「大倉山ミエル」
大倉山4丁目の住宅街にある一軒家を使った「大倉山ミエル」

<鈴木智香子さん:NPO法人「街カフェ大倉山ミエル」代表>

 

やはり、“同じ場”に集まることができないという変化は大きいですね。人が多くなるといけませんので、「大倉山ミエル」を訪問した親子のみなさんが自主的に「じゃあ野外で、公園で遊ぼう」という動きや、「とにかく人数を少なく、活動の回数を多くする」といった工夫も見られました。

 

また、介護予防活動の「通所型サービスB」のなかには、ランチも兼ねた活動もあるのですが、参加人数をかなり減らしていますので、人件費をかけて調理することは難しくなりました。

 

そのため、ランチは、近くで同様の活動「いきいき夢サロン」を開いている「合同会社どりいむ」(大倉山1丁目)さんから主菜と副菜を届けてもらい、私たちはご飯とおみそ汁だけを用意するという形で開いています。

 

 

介護予防につなげる「通所型サービスB」も少人数で開いている(郷づくり濱なかまFacebookより)
介護予防につなげる「通所型サービスB」も少人数で開いている(郷づくり濱なかまFacebookより)

<岩田聡子さん:「居場所づくり濱なかま」代表>

 

先ほどからお話に出ているサービスBの通所型支援「とりやまの郷」では、私たちも会場の確保という面で苦労がありました。

 

鳥山町にサ高住(サービス付き高齢者住宅)と呼ばれる高齢の方専用の賃貸住宅「そんぽの家S新横浜西」(SOMPOケア株式会社運営)という施設があるのですが、「とりやまの郷」はこれまで、同施設のダイニングをお借りして、入居者や地域の方も交え20人~30人が参加するサロンを行っていました。

 

しかし、新型コロナ禍以降は感染予防のため、そんぽの家へは入居者以外の人が出入りできない状態となり、参加者さんとの交流が断絶されてしまいました。

 

そこでまず、40人ほどの入居者の方に手紙を出すということを4月ぐらいに始めたところ、「コロナ禍で誰とも接点を持てていない」という入居者さんにとても喜ばれました。

 

また地域の方に対しては、緊急事態宣言が解除された後、「まずはお散歩から始めよう」と考え、どこか一カ所に集うのではなく、付近を散歩する活動から再開しました。

 

今は鳥山町公民館をお借りし、毎回5人程度の方に集まっていただき、スタッフも含め10人ぐらいの規模で通所型支援サービス「とりやまの郷」を開いているところです。

 

 

「密」にならないよう公園でラジオ体操を行うという企画も(下田町)
「密」にならないよう公園でラジオ体操を行うという企画も(下田町)

<井上駿さん:横浜市下田地域ケアプラザ>

 

私の仕事は、下田地域ケアプラザに地域の人に集まっていただき、交流をしてもらう、ということが大きなミッションでした。

 

ところが、新型コロナの影響で180度がらっと変わってしまった。今まで自分たちがやってきたことが全部“三密”に当たってしまうわけで、半年間近く何もできなかったというのが現状です。

 

半年間の間、どうすれば“密”を避けた交流活動ができるのかを考え続け、今は「健康ウォーキング」と題し、建物の外に少人数で集まってもらい、短時間で交流していただくという形で、活動を少しずつ増やしています。

 

また、今まで40人くらい集まって開いていた交流の場「高齢者サロン」も規模を半分以下に縮小し、調理室で作っていたランチは、近くの飲食店に出前をお願いする形で再開しました。

 

今年夏ごろから下田町内の公園で、毎週木曜日に「ラジオ体操」も開催しています。午前中は近くの保育所の散歩場所や小学校の課外活動の場にもなっていますので、結果的に多世代交流ができているのかもしれません。

 

「毎週木曜日の10時に公園で」ということだけを覚えておいていただいて、10分から15分かけてラジオ体操を2回してすぐに解散という形です。“三密”を避けて短時間での開催としたので、男性の方にも参加しやすいようです。みなさんの習慣となりつつあるのは嬉しいですね。

 

 

3.緊急事態下で有効だった連絡手段とは

 

広がるスマホ活用、地域の講習会で支える

 

<司会>

 

コロナ禍で最も有効だった連絡手段や情報発信について、団体内での連絡手段と、参加者の方に対してはどのように情報を発信したのかを教えてください

 

今回の「つなぎ塾トーク」は1時間30分超にわたって行われた
今回の「つなぎ塾トーク」は1時間30分超にわたって行われた

 

<岩田聡子さん:「居場所づくり濱なかま」代表>

 

「シニア」と呼ばれる方々も全員がスマートフォン(スマホ)を持っていただき、通信アプリ「LINE(ライン)」は使えるほうがいい、という考えから、5年ほど前から地域で「スマートフォン教室」を開いてきました。

 

サービス開始当初、こちら(城郷小机地域ケアプラザ)に相談したところ、この地域のスマートフォン利用に関するアンケートを取っていただいたのですが、この地域では「スマホは必要ない」と考える方が大半という結論に至りました。

 

もしかすると「地域性」かもしれない、との思いから隣の都筑区にあるケアプラザさんに話したら「やってみましょう」となって、教室が3つもできる成果も出てきました。その後、社会環境の変化などもあり、城郷小机地域ケアプラザや岸根町内会などでもスマートフォン教室を始めました。結果として港北区で始めたのは遅かったですね。

 

それでもコロナ禍の前に、何人もの方とLINEでつながることができたので、お散歩に誘う、様子をうかがうなど気軽なコミュニケーションを継続することができました。

 

スマートフォン教室を通じ、高齢層の方に向け、スマホをいかに楽しく使うかということをお伝えできたことは、非常に有効だったかなと思います。

 

また、運営メンバーの間ではオンライン会議システム「Zoom(ズーム)」を使っています。4月や5月の外出自粛となっていた時期にも顔を合わせられるということで、すごく安心感がありました。

 

 

<鈴木智香子さん:NPO法人「街カフェ大倉山ミエル」代表>

 

私たちの「大倉山ミエル」でも、“IT講座”としてスマートフォンなどの講習会を月に1回、10年近くにわたって開いてきました。菊名で「ワークショップ・ピリオド」を主宰されている小林富夫さんに講師をお願いしています。

 

最近の講習会では、コロナ禍となったので、「みんなとつながりたいし、孫にも会えないので最近は使ってなかったSNS『Facebook(フェイスブック)』や『LINE』の利用を再開したい」という80代の方が来られ、何度かの講習を経て使いこなせるようになっています。

 

シニアだからできない、ということはなく、教える側と学ぶ側の双方が根気強さを持ち、学べる場さえ作ればできるようになるということを感じました。

 

Facebook(左)やTwitterの活用も(左はグループ「港北区の仲間」、右は横浜市下田地域ケアプラザのTwitter)
Facebook(左)やTwitterの活用も(左はグループ「港北区の仲間」、右は横浜市下田地域ケアプラザのTwitter)

 

<本間克之さん:フリーペーパー『えがお』代表>

 

私たちはシニアの方を対象としたフリーペーパーを発行しているのですが、IT活用面で感じていることは、「Facebook(フェイスブック)」の利用者が実は多いという点です。

 

Facebook内で「港北区の仲間」というグループを作っていますが、ここは参加者が400人を超えています。

 

10月にオンラインで開いた「えがおまつり」もほとんどはFacebookで告知し、さらにFacebookが提供するメッセージツール「Messenger(メッセンジャー)」を使ってさらに告知し、われわれ運営側のメンバーは「Zoom」で会議するというパターンでした。

 

<井上駿さん:横浜市下田地域ケアプラザ>

 

先ほど、街カフェ大倉山ミエルの鈴木智香子さんから「マイナス1歳から101歳まで」の方が利用されているというお話がありましたが、地域ケアプラザもシニアの方だけでなく、赤ちゃんからお年寄りまで幅広い年齢層の方が利用されています。

 

そのため、下田地域ケアプラザでは、若い人向けには短文ブログ「Twitter(ツイッター)」や施設のホームページ、さらに港北区とも提携している地域向けのSNSアプリ「ピアッザ(PIAZZA)」も活用し、イベント告知などを行っているところです。

 

高齢の方向けには、主に広報紙での告知を行っていますが、コロナ禍で民生委員さんが動けなくなったり、町内会・自治会でも回覧板自体が回らない状態となって配りづらい状況になってしまいましたので、街にある掲示板にチラシやポスターを貼って歩きました。参加していただけそうな方には個別にお電話もしています。

 

 

4.コロナ禍を経た活動の変化とは

 

イベントをオンライン開催、「LINE」利用も進む

 

<司会>

 

今回のコロナ禍を経て、活動におけるIT活用などの面で変化は見られましたか

 

WiFiが導入されている地域拠点も増えている(大倉山ミエル、写真は2019年5月)
WiFiが導入されている地域拠点も増えている(大倉山ミエル、写真は2019年5月)

<鈴木智香子さん:NPO法人「街カフェ大倉山ミエル」代表>

 

「大倉山ミエル」では、利用者の方がインターネットを自由に使っていただけるWiFi(ワイファイ=無線通信)を備えていますので、先ほどお話した80代の方は、IT講座で学んだ知識を生かし、インターネットで昭和歌謡を楽しんでおられますね。

 

一方、若いお母さんたちのIT活用面では、写真SNS「Instagram(インスタグラム=インスタ)」だったり、「Twitter(ツイッター)」だったりしており、運営者側で全部対応するのは難しいので、得意な方に“先生”になってもらっています。

 

変化という面では、神奈川県の助成で米アップル製のタブレット端末「iPad(アイパッド)」を4台導入しました。今後はこれをしっかり活用しながら、“リモート認知症カフェ”をできればと考えているところです。

 

 

「港北えがおまつり」はオンライン上で開催した(公式Facebookより)
「港北えがおまつり」はオンライン上で開催した(公式Facebookより)

<本間克之さん:フリーペーパー『えがお』代表>

 

以前から「えがお」ではシニアの方を対象にスマートフォンやパソコンに関する相談を電話で受けたり、スマホ講座を開催していたりしたのですが、8月ぐらいからは問い合わせが多くなりました。「自宅まで来て教えて」という方には1回1時間あたり3000円をいただいていますが、「えがおdeおしゃべりオンライン」という企画では無料で受けています。

 

また、10月にオンラインで開いた「えがおまつり」は、オンライン会議システムの「Zoom(ズーム)」を使って行ったのですが、事前に“練習会”と名付けた接続体験を6回にわたって行いました。Zoomの“オンライン会議”に接続するアドレスを広く公開し、自由に接続してみていただく形です。

 

オンライン会議システムへ接続することは、慣れるまでは少し難しい面もあると思いましたので、この時も私の電話番号を公開し、電話でサポートできる体制も整えました。失敗してもいいので、まずはやってみよう!という後押しです。

 

Zoomの練習会に参加いただいた人のなかには、新型コロナ後にまったく会えていなかった人とオンライン上で再会できたケースもあり、「やっと会えた!」とすごく喜んでいる方もいました。

 

 

「城郷小机地域ケアプラザ」のように地区センターなどと併設している施設もある
「城郷小机地域ケアプラザ」のように地区センターなどと併設している施設もある

<井上駿さん:横浜市下田地域ケアプラザ>

 

港北区内には「地域ケアプラザ」が9カ所(新吉田・篠原・高田・下田・大豆戸・樽町・城郷小机・日吉本町・新羽)に置かれ、それぞれ、横浜共生会(新吉田・下田・樽町・新羽)、横浜市社会福祉協議会(篠原)、緑峰(りょくほう)会(高田・日吉本町)、横浜市福祉サービス協会(大豆戸)、秀峰(しゅうほう)会(城郷小机)といった社会福祉法人が運営しています。

 

運営法人の考え方や、利用者・地域の特性などによっても、IT活用の度合いは若干異なるのですが、横浜市は今年9月に新型コロナ対策の補正予算で、地域ケアプラザがWiFi環境を整備する際には助成を行うことを決めるなど、市もIT活用を後押ししている状況です。

 

下田地域ケアプラザでは、「Zoom」を使った講座を開催してみました。先日開かれた「男の料理教室」では、調理室に講師であるシェフの方だけ来ていただき、隣の広い多目的ホールに10人ほどの受講者の方が集まり、調理の様子を大画面のスクリーンで見るという形にしていたんですね。

 

これなら“三密”も回避できるし、講師の作っている料理をアップで見ることができ、実際に見やすい。料理もその場で一緒に召し上がることも可能です。ITを活用して新たな形の催しができたことは、非常に良かったと感じています。

 

 

城郷エリアでもさまざまな形でスマートフォン講座が行われてきた(過去のチラシより)
城郷エリアでもさまざまな形でスマートフォン講座が行われてきた(過去のチラシより)

<岩田聡子さん:「居場所づくり濱なかま」代表>

 

コロナ禍以前から、シニアの方にも「LINE」を使える方が増えてきたという印象を持っています。ただ、LINE以外のスマホの活用方法をご存じない方はまだ多いかもしれません。

 

先日、私たち運営側が広報活動を拡充するために写真SNS「Instagram(インスタグラム=インスタ)」を学ぼうということになったのですが、その場に「私も体験してみたい」と88歳の方もやって来られました。

 

その方は私たちの講習でLINEでのやりとりはできるようになっていたので、「もう1つ先にいきたい」ということで、“インスタデビュー”したところ、お孫さんからすぐにフォローされました。

 

通所サービスの「とりやまの郷」に来られた際は、その時の写真などをインスタに公開して、お孫さんに見てもらって「いいね!」が付き喜んでおられました

 

スマートフォン活用という面では、「将棋アプリ」を自分で入れてみて、「1級になったよ」とか「初段になったよ」と、1人で過ごす時間を楽しんでいる方もいらっしゃいます。

 

また、お耳が遠くサロンでの話し声が聴き取りづらいという方には「補聴器アプリ」を活用していただいたところ、みんなの話をうまく聴き取れるようになったというケースもありました。ソーシャルディスタンスの保持が重要となったコロナ禍以降は、筆談と併用した運用を行っています。

 

 

5.支援活動の「これから」と「今後」

 

団体や専門家など、区内で連携し対応の幅を広げる

 

<司会>

 

シニアの方の活動を支援する現場でも、次第にIT活用が広がっていることを感じさせられました。最後に今後の抱負などを含め、他の地域団体への広がりや連携など、一言ずつお願いできればと思います

 

本間さん(左)と井上さん
本間さん(左)と井上さん

<本間克之さん:フリーペーパー『えがお』代表>

 

高齢の方のなかには、足腰が悪くなって家から出ることができない人もいます。フリーペーパー『えがお』は、そうした方々にも情報を届けるため、新たにケアマネジャーさんや訪問看護事業所、区の医師会や歯科医師会、自治会・町内会や民生委員といったみなさんに助けていただいているところです。

 

また、休止していた地域交流の場「港北えがおカフェ」を菊名駅東口のカフェを会場にこれから再開に向けて準備しています。

 

「港北えがおカフェ」は当初、高齢者向けとして開いてきましたが、今後は認知症当事者や介護者や関わりのある家族、ケアラーさんたちが集まれる場所にできればと願っています。

 

「紙」という媒体を発行している強みを生かしながら、新型コロナ禍を乗り切りるため、これからも頑張っていきます。

 

 

「港北区生活支援センター」は日産スタジアム至近の「横浜市総合保健医療センター」(鳥山町)内にある
「港北区生活支援センター」は日産スタジアム至近の「横浜市総合保健医療センター」(鳥山町)内にある

<井上駿さん:横浜市下田地域ケアプラザ>

 

今「認知症カフェ」の再開へ向けて動いているところですが、参加される方やボランティアの方にも新型コロナの不安を取り除きながら、安心して利用できるように準備をしています。

 

最近「お散歩会」という企画を初めて行いました。「港北区生活支援センター」(心の病を持つ方が地域の中で生活することを支援する鳥山町の専門施設)さんと隔月で開いていた「おはなしもだ」という心の病を持った方やご家族の方のお話し会の一環として、下田町内にある「日吉の森庭園美術館」(下田町3丁目)へ出かけるという内容です。

 

今回は広報に工夫をこらしまして、引きこもりや心の病などで生きづらさを抱えている方の中でも比較的若い世代が集まる「虹色畑クラブ」(高田町周辺の農地などで活動)さんなど、若い方が集まる団体にチラシを配ったところ、20代から40代の方に集まっていただけました。

 

今後もコロナの影響は続きますが、さまざまな形で工夫しながら、企画していきたいと思っています。

 

 

鳥山町は城郷地区の真ん中に位置する(鳥山バス停付近)
鳥山町は城郷地区の真ん中に位置する(鳥山バス停付近)

<岩田聡子さん:「居場所づくり濱なかま」代表>

 

港北区の端に位置し、神奈川区や緑区と接する城郷地区(小机・鳥山・岸根)は、どこか「区役所から忘れられている存在」にも感じられます(苦笑)。なので、地域で色んな方と連携することは重視してきました。鍼灸師さんとか調剤薬局さんとか、地域団体に限らずさまざまな方にご協力をいただいています。

 

また、今回のコロナ禍によって不安定になっている人も目立ちます。私は小・中・高校生の子どもがいることもあり、不登校の子をもつお母さん方からの相談がすごく多い。なかには、発達障害だったり、ちょっと問題を抱えている子もいたりと、私1人だけでは受け止め切れないケースもありますので、「港北区生活支援センター」や地域ケアプラザといった専門家の方がいる施設も巻き込みつつ、活動を展開しているところです。

 

城郷地区で言いますと、小机には「ホッとカフェ」(小机駅近くで地域の人が集まれるコミュニティーカフェ)、岸根には「COCO(ココ)しのはら」(岸根公園駅近くの篠原町にある地域福祉交流スペース)と、地域の人が気軽に集まれる拠点が開設されているのですが、ちょうど真ん中の鳥山町にはありません。鳥山町にもそうした拠点を持ちたい、との思いがあります。

 

 

鈴木さん(左)と岩田さん
鈴木さん(左)と岩田さん

<鈴木智香子さん:NPO法人「街カフェ大倉山ミエル」代表>

 

大倉山ミエルは以前から「熊野の森もろおかスタイル」(師岡町周辺で活動)さんや「菊名みんなのひろば」(錦が丘)さんなど、大倉山周辺のさまざまな団体の方と連携して活動してきました。隣の大曽根エリアにも団体ができるのではないかとの期待があり、もちろん連携できればと思っています。

 

活動面では、まちづくり支援のNPO法人「横浜プランナーズネットワーク」の支援を得て、「みんなの地域たすけあい つながりマップ」を制作し、大倉山や大豆戸、菊名などの施設をわかりやすく紹介する取り組みも行っており、このマップをさらに進化させながら、地域での連携を強化していきたいと考えています。

 

今回のコロナ禍では、樽町エリアで「まちの相棒プロジェクト」を展開されている、ぼうだあきこさんとともに、妊婦・赤ちゃんのいる家庭に向けて港北区内の情報を発信するサイト「ここみて港北」を5月に立ち上げたところです。

 

また、最近入った老人クラブでは、これまで交流のなかった方々ともお会いする機会ができそうですので、自らもシニアと呼ばれる年代に近づいた一人として、新たなつながりを生み出していきたいと願っています。

 

<司会>

 

区内でさまざまな方が上手くつながって、より発展的な方向へ果敢にチャレンジしていることが伝わってきました。本日は長時間にわたってありがとうございました

 

(「つなぎ塾トーク」第5回:開催日2020年11月18日)