最初の一歩は「家から出よう!」
発表のキャッチテーマは「家から出よう!まず一歩!」。
2年前に福岡から来た、スーパーアクティブシニアの津田さんが主人公。この横浜市港北区でまずびっくり。老人会がどんどんなくなっていくことにショック、ショック、ショック……。
友だちがいない。情報が入ってこない。でも、そこでへこたれない津田さん。考えました。自ら動く決心をする。このワークショップでも、「自分には名刺がない。自分にも必要だ」と分かるやいなや、早速作成し、早速毎日配りまくっている。
私たちは、この津田さんを中心に話を進めていく。
いま紹介された通り、こちらに来たばかりなのですが、来て感じたこと、ここを中心に話を展開したい。
やはり「一人では生きていけない」ということと、やはり「元気で楽しく生きていく」には、やはり色々な人がいないといけないと思った。ただ、引っ越してきたばかりで、全然地域に知り合いもいない。友だちもいない。
そういった状態になってくると、回覧板などで、いろいろな情報は入ってくるけれども、近くの人とのつながりがないと、地に足の付いた情報が入って来ず、非常に寂しい毎日になってしまう。
「こういうことではいかん」ということで、いろんな所を回って行ったが、新羽地域も7つの部会に分かれているが、そのうちの5つの老人会が既になくなっている状態だった。
そういった状況から脱皮するには、どうしたら良いか。グループの皆で考えた。
引っ越してきて名刺を作った津田さんですが、知り合いがいないので、「仲間をつくるにはどうしたらいいのだろう」ということで、いろいろなところへ聞きにいくことに。
まずは近所の人に聞いてみたのですが、思わしいアイデアがない。次に区役所に行ってみたり、民生委員さんに聞いてみたりしたが、「ここで仲間を作れそう」というアイデアにはなかなか行きつけなかった。
そんななか、新羽地域ケアプラザを知る機会があり、「ケアプラザって何だろう」と思った。
ケアプラザの相談員の方が「老人会はいかがですか」とアイデアを出してくれた。
参加してみたところ、その中で行われていた認知症予防の「スリーA活動(明るく・頭を使って・諦めないの「A」)」がとても気持ちに合い、生活にハリが出来、いきいきした日々が始まった。
仲間とのつながりもできたが、そこで津田さんは、老人会の参加者は減少中という問題に直面することに。
このままでは、皆さんが仲間づくりをしたいというときに、その仲間づくりをする場がなくなってしまうのではないか。
どうしたらいいのだろう。
いま津田さんは御年83歳。北新横浜在住2年目だ。
孤立無援の方はたくさんいるのではないか。
「出て行きたくない人」の代弁をしてみると――
まぁ「(ひとり)ぼっち」でもいいし、まぁ、毎日コンビニ飯でもいいかもしれない。一人、今更出ていって傷つきたくもないしなぁ、どこへ行けば出逢えるんだろう。ただし、もうわからない、誘われないし、まぁいいかな
――そんな男性陣は、今も多いかもしれない。
そういう状況の中で、津田さんは「多くのチャネル」から、いろいろな情報を集めようと考えた。
掲示板、回覧板(意外と見ないで回す人も多いが、さまざまな情報が詰まっている)、紙(ケアプラザにもいろいろなチラシが置いてある)、Web(インターネット)、口コミ(近所の人の)、地域マップ、人、お付き合いがあった訪問看護の方やヘルパー、元気な高齢者の方からも同じ立場として情報を集めた。
「地域とつながる」方法いうことで、2つ挙げてみる。
1つ目が「地域の防災訓練」、2つ目が「地域のお祭り」に参加すること。
防災面で言えば、たとえば、昨年の「2019年台風19号」で皆さんもご記憶があると思うが、地震と台風では避難する場所が違う。
地震は「避難所」、大雨の場合は「避難場所」というように、少し異なる。
この防災訓練に参加することによって、防災の情報が得られるだけでなく、地域の人たちや子どもたちとも接点を持つことができる。
いま、私の住む地域では中学生のボランティアが炊き出しの手伝いをしてくれている。
隣の地域では、お子さんたち、特に障害を持った子どもたちとつながることによって、さらにいろいろな人たちとのつながりができている。
また、つながりを生み出すためには地域のお祭りも重要だ。このあたりでは有名な「小机城址まつり」や「綱島桜まつり」などに参加することによって、これもまた地域とつながることができる。
ここで、地域の方の模擬店などに少しお金を落としてもらえると、地域の活性化にもつながる。
高齢の方、一人暮らしの方も、こういう場所に一歩踏み出すことで、いろいろな方たちとつながることができると思う。
今回、各分野(セクション)の皆さんが来ているので、お願いすべきこと、キーワードをお伝えしたい。
シニアの方たちが最も信頼できる情報は「自治会・町内会」からのもの。逆に「地域の情報を知っている」という点でも、シニアの力は自治会・町内会に有効ではないか。
「港北区の魅力発信」の分野では、地域の名所を一番楽しんでいるのはシニアだ。地域の名所を一番知っているのもシニア。また本人たちが「港北区の魅力」の中心となっている。
「子育て・教育」は、シニアの方たちとの接点を持っているということで、お互いに魅力を発揮したり、またバランスの良い交流を求めたりしていく。
「ビジネス・起業」は、シニアの方々の経験が若い起業家のアドバイスになり、またお金や時間や労力はかけても、あまりたくさんの報酬は求めないというのもシニアの方々の特徴なのではないか。
シニアというとどんなイメージを抱くか。「認知症」とか「オレオレ詐欺」とか課題になるような情報も流れてくるが、良いところを見ると、経験があったり、包容力があったり、時間があったり、子どもたちの居場所になったりする。
今、高齢者の方々、65歳以上の方々が本当に「高齢者」なのかという話も出ている。
人生100年時代、"人間力"を生かしていけたらと思う。
最後になりました。
「長生きは、いいねぇ!」
ありがとうございました。
……………
<担当アドバイザー・鈴木氏1>
津田さんにこれ(「長生きは、いいね」)を最後に言ってもらったときに、私たちは「これだよね」と思った。「アクティブシニア」と一緒に皆さんとつながっていきたい。
<参加者質問・コメント1>
非常に楽しい、可能性を大変感じる内容だった。最後のほうの「子ども」との交流についてベンチマーク(指標)となる事例はあるのか。
また津田さんと同じような立場の方々が津田さんのようになるにはどうしたらいいのか、どういうことを意識したらいいのか。
<発表者回答・コメント1>
下田地域ケアプラザ(下田町)では、9月にある街の防災訓練で、下田町が校区となっている日吉台西中学校の代表者が炊き出しの訓練をしてくれており、そこで地域の方たちと一緒に交流をしている。おにぎりを配ったり、起震車での地震体験を一緒にしたりしている。
日中災害が起きたときに町にいるのは高齢者の方、若い方、赤ちゃんとそのお母さんしかいない。本当に力になるのは中学生だと思う。
今、地域では中学生を巻き込んでいかに助け合える街づくりをするのかということを考えている。
<発表者回答・コメント2>
今、私の住む地域では老人会が非常に活発で、来ている人は楽しく毎日暮らしている。その中に入れてもらっているので楽しんでいるが、全体でみるとごく一部と聞いている。
楽しめる場面があるのに、皆さんが知らない。その人たちにどうやってそういった情報を伝えるべきか、という問題意識から、今回の発表内容になった。
私は福岡から急に飛んできたので、今賃貸マンションに住んでいる。74軒のマンションだが、自治会・町内会に入っているのはたった2軒しかない。
あとは全然自治会・町内会に入っていない。班長に聞いても、隣の人が誰かもわからないという状況。しかしマンションには結構お年寄りも住んでいる。
そこで私は、毎朝「おはようございます」、夕方は「こんばんは、暑いですね、寒いですね」、会った人には挨拶をしている。つまらない話だが、そういったことから、人とのつながりを作るように努力をしている。おかげで、建物の中のほとんど全員とご挨拶・声かけができるようになった。
その時がチャンスで「こういうことがありますよ」と口で伝える。皆さんに聞くとこういう時以外には「得られる情報がない」と言う。
自治会・町内会に入ってないから回覧ももちろん来ないし、老人会でどんなことがあるかも分からない。
まず一歩、家から出て、隣近所の方とお付き合いすることが一番最初じゃないかな。
これが(先ほどの発表の中の)ケアプラザにつながって、こうして地域の中で今は非常に楽しい生活をさせてもらっている。(会場から大きな拍手)
<別分野のアドバイザー・小泉氏>
私自身は「老人会」とはあまり接点がなく、地元で子育てイベントや防災訓練をやっているが、老人会は独立しているような感じがある。自分が年を取ったら分かってくるのかもしれないが、津田さんが言う通り情報受発信が課題なのかなと。もっと皆が知れるように情報発信は必要だと思った。
周知の方法として回覧とか掲示板、ほかにチラシもあるけれど、インターネットはまだ情報量にバラバラ感があるのかもしれない。それ以外のところはある程度地域で一緒だと思うのだが、そういうところに気づいているので、後半の(自治会・町内会・地域団体ジャンルの)発表につなげたい。
<別分野のアドバイザー・黒須氏>
津田さんがすごく素晴らしい生き方をされていると思った。
先ほど話に出た下田地域ケアプラザさんと一緒の下田町にいるが、「スリーA」でなく「スリーG」(家事・育児・仕事ができる男になろう)という現役向けのプログラムをここ1、2年行っているが、結構、高齢者の方が奥さんと一緒に来られる。
「厨房なんて入ったことありません」という人から、料理大好きな人まで来て、まだまだシニアの方も元気なので、我々若い世代からもどんどん街に引っ張り出して、いろいろな仕事をやってもらうのが大事かなと思う。
<別分野のアドバイザー・佐藤氏>
大変素晴らしい発表をありがとうございました。老人会に限らず「会」って、特定の方が仲良くなってしまっていて、新しく入ろうとすると意外と入りづらい雰囲気があるケースが多いと思うのだが、そのようななかでも「誰が来てもウエルカム(歓迎)」という雰囲気がある老人会は素晴らしいな、素敵だなと思った。
余談だが、今は特殊詐欺が大変流行っていて、「俺は騙されないぞ」という方が本当に被害にあっているので、ぜひそういったことも伝えていただけたら。
<別分野のアドバイザー・平井氏>
「防災訓練」のところに私は魅かれた。下に「お祭り」とも書かれていて、「防災とお祭り」、「防災と運動会」とか、「防災とウォーキング」とか、いろいろなところで、イベントのコラボもいっぱいできそうだな、と思った。
新しく入った方が仲間に加われない・加わりにくい、また一回は出たけどもう来ないということになりかねないので、ぜひ「グループで動く」、例えばウォーキングなどは「グループで動く」、グループ作って半ば強制的に動く、周りの人と一緒に行動する、運動会などもグループでゲームをするといったことをたくさんやってもらいたい。
その時に、来てもらうには、やはり「食べ物とお土産」。これをぜひ付けてほしい。
関心がなくても、何か食べられて、何かもらって帰れる。そういう意味で、炊き出しは、すごく大好き。
<担当アドバイザー・鈴木氏2>
平井先生がおっしゃるように、防災というのはいろいろなものを「横つなぎ」する。
シニアの方々も決して「支えられる」だけの存在ではなくて、「支える」側に地域の中ではなっている。
場を運営する方の「ここの平均年齢70歳代なんだよ」というと、ネガティブにとらえられることがあるが、逆に、「平均年齢70歳でずーっとやればいい」という場所もいっぱいあるはずだ。
そこに多世代でつながれる場所ができていくと今日も思った。