つなぎ塾トーク<第3回:高田のみなさん>

人生かけた地域への愛情、災禍は変化の契機に

一度に多くの人を集めることが難しくなるなど、新型コロナウイルスの影響で、地域活動のスタイルに変化が迫られています。「港北つなぎ塾」でも毎年冬に一同に集まる形での連続講座はいったん中断し、区内における地域団体の現状と対策法を実際に活動されている方々に尋ね、文章や画像などの形で情報を共有していく「つなぎ塾トーク」を個別に始めました。

つなぎ塾トークの第3回は、市営地下鉄グリーンライン・高田(たかた)駅の周辺に広がる「高田地区」を訪ねました。地域が主導する“居場所”づくりが盛んな地域で、今回の会場もその一つである「コミュニティカフェゆずの樹」(高田東3丁目)です。

 

高度経済成長期から自然の多く残る良好な戸建て住宅地として知られ、2008年の地下鉄開業後はより人気が高まる高田地区で、連合町内会と地区社会福祉協議会で役員をつとめる3人の方に話を伺いました。(2020年10月16日公開、9月16日開催)

 

<お話を聞いた方々>

 

<司会・構成>

  • 港北区地域振興課 地域力推進担当
  • 一般社団法人地域インターネット新聞社(横浜日吉新聞・新横浜新聞)
  • 写真:横浜日吉新聞撮影

 

1.地元「高田」との関わりを振り返る

 

人生の半分はボランティアが“本業”に

 

<司会>

 

本日はありがとうございます。高田地区でさまざまな地域活動を行っている皆さんですが、どういう役割を担っておられるのでしょうか

 

高田町連合町内会・会長の宮田さん
高田町連合町内会・会長の宮田さん

<宮田 寿雄さん:高田町連合町内会会長>

 

高田の3つの地域(高田西・高田東・高田町)で活動する8つの町内会・自治会で組織された「高田町連合町内会」で、2016(平成28)年4月から会長をつとめさせていただいております。

 

連合町内会を構成する8つの町内会・自治会のうち、「高田町町内会」(高田町と西・東の多くをエリアとする町内会)に所属し、会長をつとめています。

 

また、本日は「高田地区社会福祉協議会(地区社協)」の相澤昇会長にお越しいただいていますが、その地区社協でも副会長をさせていただいているところです。

 

少し自己紹介をしますと、「だいたい私の年齢は、見た目よりも3つから5つ引いてください」と皆さんにお願いしています(笑)

 

もし、皆さんが私の年齢を「80歳くらいではないか」と見られているようでしたら、“マイナス5歳”で75歳という形ですね(笑)。本当の年齢を明かしますと、1946(昭和21)年生まれの73歳で、今年の冬には74歳になります。

 

生まれも育ちも高田でして、私の親もそうですし、その前の祖父の時代からずっと高田でした。私の親父は、高田町連合町内会で今から4代くらい前に会長をしておりました。

 

私のほうは会社員を経て、その後に不動産事業を営んでおりましたが、現在は引退しています。人生の半分くらいはボランティア活動に携わっていまして、子どもの小・中学校のPTA役員に始まり、町内会の委嘱団体である「スポーツ推進委員」にも就き、その後に町内会の役員をさせていただき、35年くらいが経ちました。

 

他の人から見ると、「本業は何なのか?」との声も聴こえてきますが、私の人生ではボランティアという部分が“本業”なのかもしれません。

 

 

高田地区社協・会長の相澤さん
高田地区社協・会長の相澤さん

<相澤 昇さん:高田地区社会福祉協議会会長>

 

私も生まれも育ちもこの高田地区です。生まれたところは高田町内会のエリアですが、“次男坊”ですので実家から出まして、高田東の「高田町親和会」(高田東1・2丁目の一部をエリアとする町内会)のエリアにおります。

 

昨年までは高田町連合町内会で副会長を仰せつかっておりましたけれども、年齢的なこともありますし、今年度からは降りさせていただき、「高田地区社会福祉協議会(地区社協)」の会長として、地区社協の活動に全力で当たっているところです。

 

もともと、営業一筋のサラリーマンでして、会社では運よく役員に就かせていただいたことで引退が遠のき、前の町内会長さんからは「相澤はいつ会社を引退するんだ?」とよく聞かれました。

 

67歳まで仕事を続けた後、2009(平成21)年から町内会の「環境事業推進委員」に就き、2013(平成25)年度には高田町親和会で会長をさせていただきました。

 

一方、2018(平成30)年度から会長に就いた高田地区社協ですが、活動内容を端的に言いますと「困った方がいればその人たちをお助けをする」ということが第一にあると思っております。

 

引き続き、地域の福祉施設や福祉団体と協力しながら、頑張ってまいります。

 

 

高田町連合町内会・副会長の石井さん
高田町連合町内会・副会長の石井さん

<石井 達也さん:高田町連合町内会副会長>

 

生まれは東京都下の「読売ランド」に近いあたりなのですが、親父が高田東に家を買ってから早や66年が経っています。

 

私も2歳の頃から住んでおりまして、桂幼稚園(高田東1丁目)、高田小学校(高田町)、新田中学校(新吉田東5=高田中学校が開校する1986年以前の中学校学区)と、まさに“高田のエリートコース”を歩んできました(笑)

 

勤めていた銀行を定年退職後、2013年4月からは地元の「高田町住宅自治会」(高田東1丁目の一部がエリア)で会長をさせいただいています。

 

その後、2014年4月から高田地区社協の事務局長、今年(2020年)の4月からは高田連合町内会で副会長も務めているところです。

 

今、地区社協と連合町内会の共同ホームページ「助け合いのまち高田を作ったり、アップデートしたりという作業を担当していますが、このホームページをどう広めていくかが課題となっています。

 

 

2.地域活動における「広報」の現状とは

 

「広報紙」は同時にホームページ上でも公開

 

<司会>

 

 石井副会長からホームページのお話も出ましたが、地域活動における広報活動の現状を教えてください

 

地区社協と連合町内会の共同ホームページ「助け合いのまち高田」
地区社協と連合町内会の共同ホームページ「助け合いのまち高田」

 

<宮田 寿雄さん:高田町連合町内会会長>

 

私の所属する「高田町内会」では、広報紙「高田町内会だより」を年に4回発行していまして、地区社協と連合町内会の共同ホームページ「助け合いのまち高田」でもPDF形式で公開しています。

 

<相澤 昇さん:高田地区社会福祉協議会会長>

 

地元の「高田町親和会」では「高田町親和会だより」を年に4回発行していまして、各家庭に配布するほか、ホームページ「助け合いのまち高田」にも公開中です。

 

高田地区社協では年2回、広報紙「翔」を5月と11月に発行し、高田エリアの全戸(6700世帯)に配布し、ホームページにも掲載中です。

 

 

町内会の広報紙「高田町内会だより」(左)と「高田町親和会だより」は年に4回の定期発行を続けている
町内会の広報紙「高田町内会だより」(左)と「高田町親和会だより」は年に4回の定期発行を続けている

 

<石井 達也さん:高田町連合町内会副会長>

 

私の住む「高田町住宅自治会」では、世帯数が多くないこともあって情報は主に回覧板で回していますが、活動報告については、ホームページ「助け合いのまち高田」にも写真などを随時載せています。

 

高田地区社協と連合町内会による「助け合いのまち高田」は、昨年(2019年)冬から始めました。もともと、地区社協のホームページは10年以上前からあったのですが、担当者の方がいなくなるなどして更新できない状態となり、ゼロベースで作り直したものです。

 

<宮田 寿雄さん:高田町連合町内会会長>

 

「広報」という点で話しますと、町内会・自治会には、横浜市が発行する「広報紙(広報よこはま)」や回覧・掲示物を配るという仕事もあります。

 

高田町内会だけで3400世帯あり、28のブロックに分かれて配布しています。ただ、広報紙を毎月配ることの負担が大きいとの声を受け、一部は配布を外部委託しているブロックもあり、これは今後増えていくかもしれません。

 

一方で月1回の広報紙配布を通じ、人と人が会える機会を大事にしたい、と広報紙の配布を外部委託すべきではないとの意見もあります。

 

 3.「コロナ禍」での連絡体制をどうしたか

 

基本は「メール」、コロナ禍で「LINE」を活用

 

<司会>

 

今年は新年度に入ってすぐ、4月7日に「緊急事態宣言」が出され、5月25日には解除となりましたが、外出しづらい状態が2カ月近く続きました。そんななかで、連絡体制はどうしていましたか?

 

緊急事態宣言中も「LINE」でやり取りしていたという
緊急事態宣言中も「LINE」でやり取りしていたという

 

<宮田 寿雄さん:高田町連合町内会会長>

 

幹部だけが集まって役員会は開催しましたが、一同に集まる形での総会は行えていません。

 

緊急事態宣言が出ていた間、役員の連絡はメッセンジャーアプリ「LINE(ライン)」を使っていました。

 

4年くらい前から連合町内会では連絡はメールで、という形になっており、そんななか石井副会長から「LINE」を教えてもらい、それもやろうか、となりました。

 

LINEは複数人でメッセージのやり取りができる、という点がメリットで、コロナ禍での連絡に役立ちました。

 

<石井 達也さん:高田町連合町内会副会長>

 

基本的に町内会・自治会というのは、めちゃくちゃアナログなわけです。メールもほとんど使わない。私たちの連合町内会でも、その当時、議事録を作ったとしても、プリントしてそのまま持っていく、というような作業をしていました。

 

現在の宮田寿雄さんが2016年に会長になられて、「みんなでメールを使いましょう」と言って一気に進めた。

 

昨年(2019)年には、高田地区社協と共同でホームページを作ったので、そこに議事録などをアップしておけば、「見たい人は見られますよ」という形にもっていけたというのも非常に大きいですね。

 

<相澤 昇さん:高田地区社会福祉協議会会長>

 

私も昨年まで連合町内会の副会長をしていましたが、企業時代に使っていたこともあり、メールでの連絡に違和感はありませんでした。

 

ただ、「LINE」は今年9月23日から一部の古いスマートフォン機種だと使えなくなってしまうんですよね。私の持っている機種が該当してしまい、機種変更とデータの移行を慌てて行ったところです。

 

(※)編注:LINE社が古いバージョンのOS(Androi/iOS)を使った一部スマートフォンでのアプリ提供・サービスを9月から取り止めた

 

なお、高田地区社協のほうですが、一同に集まった形での総会を開くことはできず、すべて「書面」での開催となりました。

 

<石井 達也さん:高田町連合町内会副会長>

 

LINEについて言いますと、意外と広く皆さんに受け入れやすいツールではないでしょうか。

 

高田地区社協で福祉関連の地域活動団体が集まる「懇談会」があるのですが、参加する団体のなかで、ずっと活動を休んでいるところがありました。

 

メンバーから「家から一歩も出られないし、毎日誰とも話せない日が多く、頭が変になりそう」という声があがり、「じゃあみんなで話しましょう」とLINEのグループ作ったケースもありましたね。

 

「LINEグループ」づくりや使用方法などの面倒を見る人がいれば、LINEは意外と垣根は低いのかな、という気はします。ホームページを閲覧させる形で情報を伝えるよりは、よほど手軽なIT手段ではないでしょうか。

 

 

 4.コロナ禍でのイベント・活動をどうしたか

 

アイデアを駆使し「防犯・見守り活動」を展開

 

<司会>

 

港北区内では今も多くの定例イベントの開催は難しい状態です。高田ではどうなっていますか

  

今年2月2日には高田地域ケアプラザで「たかたん こどもまつり」を開いた
今年2月2日には高田地域ケアプラザで「たかたん こどもまつり」を開いた

 

<宮田 寿雄さん:高田町連合町内会会長>

 

町内会が関係する地域でのイベントは、残念ですが、春以降の新型コロナ禍でほとんどを中止としました。集まっちゃいけないということで、やっぱりね、やれないし、できない。

 

<相澤 昇さん:高田地区社会福祉協議会会長>

 

高田地区社協の関係で言いますと、6月以降はスペースが比較的広い「高田地域ケアプラザ」に会場を移すなどしてイベントを始めた団体もありますが、新型コロナの様子を見ながら手探りの状態です。

 

なかには、大人数で“密”になってしまうので、来年3月までは中止にしようという団体もあります。

 

もし、冬ごろまでに新型コロナが収束して開催できそうならば、広報などでお知らせしながら、イベントを始めようというふうに皆さんと話しているところです。

 

高田町内会の掲示板には夏の盆踊りの中止を知らせる掲示も
高田町内会の掲示板には夏の盆踊りの中止を知らせる掲示も

<司会>

 

防犯や見守りといった活動はどうしましたか

 

<宮田 寿雄さん:高田町連合町内会会長>

 

要援護者の見守り活動ですが、やはり個別訪問はできないですね。情報物の「ポスティング」くらいで留めるという活動にならざるを得ません。

 

<相澤 昇さん:高田地区社会福祉協議会会長>

 

防犯活動としては、単一町内会(高田地区の8つの町内会・自治会ごと)でおおむね毎月1回は行っています。

 

ただ、以前にように「火の用心」や「振り込め詐欺に気を付けましょう」など、声を張り上げてハンドマイクを使って広報すると「飛沫」が飛んでしまうことになります。

 

そこで、私の所属する「高田町親和会」では、ICレコーダーにそうした音声を録音してハンドマイクを通じて周知する、というような工夫しながら防犯活動を行っているところです。歩く際も参加者は1メートル半以上離れるようにしています。

 

<石井 達也さん:高田町連合町内会副会長>

 

私たちの「高田町住宅自治会」では、毎週月・水・金曜日の夜8時に、防犯活動として町内会をぐるぐる回っていました

 

ただ、メンバーが年齢を重ねてきて、「週に3回はちょっときつい」という声や、今年の8月は猛暑だったこともあり、今月(9月)は週2回に減らしています。

 

また、1月と8月を除き「毎月1日」の朝9時には、家の前に顔を出してください、とお願いをしています。以前は家の前に出てきてもらって、私とか民生委員とかが町内をまわっていました。町内会全部で210世帯くらいなので、それほど大きな負担にはなりません。

 

今は町内の1カ所に皆さんが集まってくるようになっていまして、集まった人に「特殊詐欺が多いから気を付けましょう」といった話をして、じゃあまた来月に、というような流れです。

 

<相澤 昇さん:高田地区社会福祉協議会会長>

 

「高田町親和会」では、2015(平成27)年度より高齢者と障害者の方に「黄色いハンカチ」をお配りする取り組みをしております。

 

地震などの災害があった時、大丈夫な時は外から見えるところに、その黄色いハンカチを出しておいていただきたいという趣旨です。出ていれば、すぐに次のところに訪問できるわけです。

 

今は町内会長を退きましたが、去年までは高齢の方のところへ行くと、玄関のところに黄色いハンカチが置いてあるなど、そういうことが確認できることもありました。なかには「もうハンカチがどこかへいっちゃった」という人もいるのでしょうけど……。

 

 5.広報活動における現在の課題とは

 

どうすればホームページ閲覧は増えるか

 

<司会>

 

高田の連合町内会も地区社協も、ホームページや広報紙など広報面をかなり積極的に行っている印象ですが、課題はどこにありますか

 

2019年の年始に開いた高田地区の賀詞交歓会ではホームページ完成も報告された
2019年の年始に開いた高田地区の賀詞交歓会ではホームページ完成も報告された

 

<宮田 寿雄さん:高田町連合町内会会長>

 

やはり、ホームページのアクセス数が伸びないことでしょうか。

 

連合町内会を構成する各町内会・自治会にも「PRをどんどんしてください」と投げかけているのですが、なかなか反応は少ないですね。

 

ホームページを運用できていることは良いのですが、その先の望んでいる方向には、まだ残念ながら行けていないというのが現状です。

 

<石井 達也さん:高田町連合町内会副会長>

 

意志がはっきりある人と、全くない人っていうのがはっきり分かれていて、この温度差は、いかんともしがたい。

 

ホームページへのアクセス数は無料の集計サービス「Google(グーグル)アナリティクス」で知ることができるのですが、見ているとなかなか厳しい。

 

そこで、若い人に興味を持ってもらおうと、高田中学校の生徒の皆さんと連携しようとしています。

 

今の中学生はiPadを使って授業もしていますし、さまざなま体験をするのにホームページも良いのではないかと思います。生徒から親にもつながります。

 

そんな話が盛り上がっていたのですが、突然の新型コロナ禍で進捗が止まっている状態です。状況が落ち着いたら進めたいですね。

 

<司会>

 

ホームページを広く知っていただくには、街の話題を拡充していくという方法が考えられます。たとえば若い方へのアプローチでは、高田の出身者で今かなり話題のお笑い芸人の方がいらっしゃって、2018年10月の高田天満宮での「例大祭」にも出ていますが、そうした話とか、新たに高田でオープンする回転寿司店の話題など、“街ネタ”を載せる方法がありそうです

 

<宮田 寿雄さん:高田町連合町内会会長>

 

確かにそのお笑いコンビの方には、2年前に高田天満宮の例大祭に出ていただきましたが、今は全国的な知名度となり、そのころとは状況が変わっているので、連絡さえ取るのが厳しい面があります。

 

こうなったら、私がこうして頭を下げて……(実際に手をついて頭を下げる仕草に、一同笑い)

 

(※)編注:2人組のお笑いコンビ「ぺこぱ」のシュウペイさんは、高田出身であることを2018年10月の高田天満宮における奉納演芸で話していた

 

<石井 達也さん:高田町連合町内会副会長>

 

私が中学生にITに興味を持ってもらいたいと思った理由の一つとして、世界中の人が見るんだよ、という感覚を持ってもらいたいな、と思ったことがあります。

 

SNSなどに変な内容をアップしてしまったり、誘拐をもくろんでいるような犯罪者に騙されて交流してしまったり、怖い面もあるということを知ってほしいという思いもあります。いわゆる「ITリテラシー」の底上げを目指す目的を持っています。

 

<相澤 昇さん:高田地区社会福祉協議会会長>

 

ホームページの告知ですが、ちょうど1年前にも一度実施しましたけど、チラシを作って高田の全戸配布をする、ということをもう一度行っても良いかもしれません。

 

今は、インターネット印刷で発注すれば印刷費用も安く抑えられます。活動をPRすることで、役員のなり手不足とか、そういうところにも役立つのではないかと思っています。

 

ホームページの開設を知らせるチラシも配布している
ホームページの開設を知らせるチラシも配布している

 

6.地域活動における現在の課題とは

 

業務の軽減と理解を深めることが重要

 

<司会>

 

広報活動について話していただきましたが、地域活動の全般に対する現状や目標を教えてください

 

今回の「つなぎ塾トーク」で会場となった「ゆずの樹」は一軒家を使った地域の居場所、高田エリアは居場所づくりがさかんに行われている
今回の「つなぎ塾トーク」で会場となった「ゆずの樹」は一軒家を使った地域の居場所、高田エリアは居場所づくりがさかんに行われている

 

<石井 達也さん:高田町連合町内会副会長>

 

地域活動について、自身の経験をお話ししますと、銀行員を定年退職した後、「高田町住宅自治会」の前会長に「会長をやってくれませんか」と言われまして、「サラリーマン生活も終わったので、もう大丈夫だ」と引き受けましたが、こんなに仕事が多いとは想像していませんでした

 

引き受けた以上、自治会のなかで、どういうお金の使い方をするのかというのを考え、決算書を見たとき、積立金が利息がつかない「定期預金」で眠っていることを知りました。

 

元銀行員が言うのも変な話ですが、貯めても金利がつくのならいいのですが、全くつかない。すずめの涙ほどもない。

 

せっかく皆さんが町内会費を払っているのだから有効活用したほうがいい、というふうに思いまして、ごみ集積場を金属製のボックス型に変えたり、災害時に給水所で使う折り畳み式のパックを配ったりといったことを実施しました。

 

「貯めるだけではなく、会員のために使いましょう」というのが役員の役割、といった考え方で活動しています。

 

先ほどから話題となっている広報面で言いますと、インターネット上のホームページ自体を見るという人が少なくなっているのでは、との思いもあります。

 

たとえば、インスタグラム(Instagram=写真SNS)やティックトック(TikTok=短時間動画の共有サイト)が若い世代に人気ですし、言葉(文字)で発信するならツイッター(Twitter)とかですね、わざわざホームページに行って情報を見る、という流れが変わっているのではないでしょうか。

 

そんな状況だからこそ、広報の拡充には、年配の方から攻めるのではなくて、若い世代から持ち上げていく、その結果、年配の方まで広がってくれたらいいな、というのが願望であり目標です。

 

盆踊りなどのイベントや会合、見守り、事務作業など町内会・自治会の仕事は多い(2018年の高田小学校での盆踊り)
盆踊りなどのイベントや会合、見守り、事務作業など町内会・自治会の仕事は多い(2018年の高田小学校での盆踊り)

 

 <宮田 寿雄さん:高田町連合町内会会長>

 

町内会の立場で申しますと、いろいろな悩みがある中で、やっぱり、町内会自体への関心度が低いという根本的な課題があります。

 

なかなか協力を得られないことで、役員の選出にしても、偏ってしまうことになりかねません。

 

同じ人が町内会や地区社協、子育て・高齢者支援など、地域内で二つも三つも役割を担うという形にならざるを得ないという状況は、やはり解決していかなければいけない。

 

たとえば、「民生委員・児童委員」「環境事業推進委員」「保健活動推進委員」「明るい選挙推進協議会推進員」「スポーツ推進委員」「青少年指導員」「消費生活推進員」「家庭防災員連絡員」といった町内会・自治会に関連する「委嘱団体」は、時期がくると選出があるのですが、なっていただくのが大変なんです。

 

なり手が見つからないから、最終的には会長が受けるとか、それは本当にどの地区も悩みを抱えています。

 

もう一つ言いますと、どこの町内会・自治会でも行政の作業の一部を担うという側面もあります。これは重要なのですが、現実には人の問題で負担増になってしまう。極力減らせないかとの思いもあります。

 

<司会>

 

町内会・自治会は地域にとって重要な役割を担っていますが、理解されづらいということでしょうか

 

<宮田 寿雄さん:高田町連合町内会会長>

 

正直に言いますと、町内会・自治会と聞いたら、もうそれだけで「NO」なんですよね。

 

「活動は1カ月に1回くらいですから、なんとかなりますよ」と話し合える展開になれば、お願いできる人も増えると思いますが、仕事はそれなりに多いので、そういうわけにもいかない。何より“アレルギー”になっているような状況を脱皮しないと、現状のままになってしまう。

 

そんな状況を変えたい思いを持つ方は多いのですが、そのエネルギーは、任期中に終わってしまいます。1期2年ですが、一生懸命やっているのだけど、なかなか効果的なかたちが見えてこないと、やっていて苦しい。

 

作業量は、極力少なく、たくさんの人で負担を少しずつ担っていくというのが一番良い形だと思っています。

 

一朝一夕にはできないのですが、このコロナという100年に1回の大災害が起こっているのですから、これを機に、より地域に目を向けていただける可能性も考えられます。私たちも何とか良い方向へ進めるよう努力していかなければならないと考えています。

 

<司会>

 

現場からの生の声を広く共有したいと思います。そして、皆さんがとても高田という街が大好きなんだというのがすごく伝わってきました。本日はありがとうございました。

 

(「つなぎ塾トーク」第3回:開催日2020年9月16日)